この記事をまとめると
■トヨタは2010年5月にテスラに総額5000万ドルの出資をした
■テスラとの協業によって誕生したのがRAV4 EVだ
■2017年6月にトヨタとテスラは資本提携を解消した
業界時価総額1位と2位はかつて提携関係にあった
「そういえば、トヨタと提携していたこともあったな」。
ふと、そんなことを思い出す人がいるかもしれない。いまや世界を代表するアメリカ企業に成長したテスラだが、トヨタとの関係を深めたことがあった。
時計の針を少し戻すと、トヨタとテスラは2010年5月に「電気自動車開発で提携」すると発表した。あわせて、トヨタはテスラに総額5000万ドル(現在の1ドル143円換算で71億5000万円)を出資することも明らかになった。
業務提携に合意したトヨタの豊田章男社長(当時)とテスラのイーロン・マスク画像はこちら
当時のテスラは、英国ロータス「エリーゼ」の車体やボディに、台湾企業とテスラが共同開発したモーターやインバータ、さらにパナソニックを含めた各種電池を搭載した「ロードスター」を生産する、規模の小さなスタートアップだった。
それが、テスラに対する投資家の立場だったイーロン・マスク氏が経営トップとなると、積極的なビジネス戦略を打ち出すようになる。
具体的には、米政府エネルギー省から次世代車製造に対する低利子融資を取り付け、ドイツのダイムラー(現メルセデス・ベンツ)と小型車「スマート」に関する連携、そしてトヨタとの連携などだ。当時、EV市場では日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」が登場したばかり。それまで大手自動車メーカーがEVを大量生産したことはなく、日産と三菱の動きをトヨタも含めてグローバルの自動車産業界が注視していた。
スマート・フォーツー・エレクトリックドライブのフロントスタイリング画像はこちら
そうしたなかで、トヨタとしては、少量生産だとしてもすでに市場導入しているテスラから知見を得ようと考えるのは当然だったかもしれない。また、カリフォルニア州におけるZEV(ゼロエミッションビークル)規制法の対応策としても同州で早期に販売可能なEVを仕立てる必要があった。トヨタはシリコンバレーに拠点を設けて、テスラとの関係を密にした。そうした様子を当時、筆者は現地で取材している。
紆余曲折を経て、なんとか登場したのが2代目「RAV4 EV」だった。その時点ではすでに前モデルとなっていたRAV4のEVコンバージョン。
トヨタRAV4 EVのフロントスタイリング画像はこちら
さらに、トヨタとテスラの関係が大きく報道されたのが、トヨタとゼネラルモーターズ(GM)の合弁事業だったNUMMI(ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング社)だ。サンフランシスコからクルマで1時間ほどの距離にある製造拠点だ。ここをテスラに売却し、テスラは「モデルS」「モデルX」の生産を進め、「モデル3」が世界的に大ブレイクする。
トヨタとGMの合弁事業だったNUMMI画像はこちら
そして2017年6月に、トヨタは所有するテスラ株のすべてを売却し、資本提携を解消した。
いわば、トヨタはテスラの育ての親のひとり。その子どもが短期間に、親の立場を脅かすような存在になろうとは誰が想像できただろうか。