BYDとヒョンデに続く日本進出メーカーはベトナムのビンファストか? 軽規格化できる小型EV「VF3」という気になる存在 (2/2ページ)

中国企業もベトナムでは優位にBEVを販売できない

 東南アジアやインドのモーターショーへ行くと、ビンファストは展示ブースを積極的に構えている。ベトナム国内ではICE(内燃機関)車や商用BEV、BEVバスなどもラインアップするが、ベトナム以外では乗用BEVのみを展開し、展示ブースには必ずVF3が展示されている。

 本稿執筆段階では、中国のBEVメーカー「NETA(ネタ)」の経営危機が報道されている。NETAは、とくにタイで顕著だったのだが、スペックを抑える代わりに買い求めやすい価格を実現したローコストBEV「NETA V」がまさに爆発的なヒットになった。しかし、そもそも収益性がいまひとつとなっていたなか、タイでは中華系BEVの乱売傾向が目立ってしまった。2025年春のバンコクモーターショーでは、より収益性の高い上級モデルへ販売比重を高めていくようなことを説明していたが、その動きが間に合わずに経営危機となってしまったようである。

 ビンファストも人気が出そうだからと安易にVF3で本格的に海外市場に打って出ると、そのあとの身動きがとれなくなる可能性があるので、そのあたりは慎重に見ているようである。

 ハノイ市内では2035年までに市内を走る路線バスすべてをBEV化することを目標としているが、そのほか一般自家用車などの車両電動化への具体的なアクションはまだない様子。

 そんなベトナムでもBEVには、購入時も含めてさまざまなインセンティブが用意されている。ベトナムでは、新車購入時の登録関係諸費用が高いとのことなので、2024年にはその登録関係諸費用の減免がBEVを中心にひんぱんに行われた。

 ハノイ市内のあるガソリンスタンドでは、オクタン価95のガソリン1リットルあたりの価格は1万9960ドン(約111円)であった。一方、BEVの充電に係る電気料金は、政府の一部補助もあってガソリン代よりかなり負担軽減となっている。ビンファスト車オーナーに関しては、フリートユーザーを除く個人ユーザーに限り、2027年6月末まで充電料金が無料化されており、いままで四輪車を所有したことのないような、新規四輪車ユーザーの囲い込みにも成功し、現状のような大ヒットとなっているようである。

 巨大コングロマリットのビングループ傘下のビンファストだけに、思い切った販売支援策がとれるようである。ベトナムにおける中国メーカーの多くはICE車をメインにラインアップしている。たとえ性能的にビンファストを上まわっていても、販売支援(政府支援もベトナム国内生産車に限定されることが多い)やその後の充電料金無料など、ここまでインセンティブで差がついてしまうと、ほかの市場のようには優位にBEVを販売していくこともできないようである。


この記事の画像ギャラリー

小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

-

愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

新着情報