「重くて速い」という新しいスーパーカーの価値
彼のもとで進められたR35GT-Rの開発は、それまでの常識を大きく覆すものだった。たとえば、同クラスのライバルから100㎏以上重い1700㎏中盤の車両重量は、低中速域や発進時など空力に頼れない領域でもトラクション性能を得るために導き出されたもの。もちろん、独立型トランスアクスル方式による前後重量配分の最適化や最新の電子デバイスあって成し遂げられるものだが、質量まで完全に制御することで、軽量なライバルを性能で凌駕したのだ。
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この「重くて速い」という新しいスーパーカーの価値こそが、R35型の真骨頂であり、スカイラインGT-Rでは到底実現できなかった世界観を作り上げたのだ。
すでに新車で手に入れることは難しくなったが、2007年の発売当初の777万円であった車両価格は年数を重ねるたびに上昇し、最終モデルは一番廉価なピュアエディションで約1444万円、最上級のNISMOスペシャルエディションになると約3061万円に到達した。それでもなお、発表と同時にほぼ完売。この状況が、GT-Rというブランド価値がいかに高まったかを如実に物語っている。
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スカイラインの名を捨てたからこそ世界的なブランドに成長できた
日本のGT-Rから世界のGT-Rへと発展を遂げたのは、カルロス・ゴーン氏の経営判断と水野和敏氏の卓越したエンジニアリング力があったからに他ならない。確かにスカイラインGT-Rという名前は名残惜しい。しかし、GT-Rという名は日産という社名すら超越し、世界の自動車ファンにとって特別な意味をもつ存在になっている。
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そう考えればあのとき「スカイライン」の名を捨てたからこそ、GT-Rは世界的なブランドに成長できたといえるだろう。ただし、そのスピリッツは脈々と受け継がれている。