スポーツカーの常識を覆した1台
チューニングしただけでディーラーは出禁!?
R35型の発売当初は、ディーラーによる改造車拒否問題が話題となった。保安基準に適合した社外パーツであっても、装着しているだけで、ディーラーでの点検、整備が断られ、保証も受けられなくなる扱いを受けた情報がいくつも上がった。これについては、当時真偽を確認したのだが、「社外品に交換したカ所については補償対象外」で、改造をしていない部分については継続できたという。
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ただし、ディーラーによっては「面倒なものは受け入れたくない」姿勢からか、すべてお断りとしていたところもあったと聞く。これは、R35型GT-Rはメーカーが多大なる開発費を掛けて、トータルバランスを磨き上げてきたクルマ。ヘタに手を加えて、バランスを崩してしまうことを懸念したからといわれている。R35型への理解が深まるとともにその規制は緩和されていった。
ポルシェ社から正式にいちゃもんをつけられた
2008年4月、開発テストの総仕上げの一環であるニュルブルクリンク北コースのタイムアタックで7分29秒03を記録。これは量産車として世界最速記録であった。ところがこのタイムにポルシェ社が「このタイムは疑わしい」と異議を申し立てた。ポルシェ社は実際に北米仕様のR35型GT-Rを購入し、ニュルブルクリンクでポルシェ911ターボ、911GT2を交えて比較テストを実施。その結果は、日産の発表したタイムより25秒遅かったことで、「日産は市販車と異なる仕様で、タイヤはセミスリックをつかったのでは?」と疑問を呈した。
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これに対して、即日産が「タイヤは純正のダンロップ製を使った」と反論している。同条件で比較したものではないため、どちらが速いのかは闇のなかだが、日本車に対してポルシェ社が公式に抗議した例は過去にはなく、結果的にR35型GT-Rの存在を世に知らしめた出来事になった。
「重いのに速い」という非常識なクルマ
日産GT-Rの車重は1.7トン強。発売当時のライバルたちの重量は1.4〜1.6トン程度で、4WDであることを差し引いても150kg近くは重かった。それにもかかわらず、それらの車種を凌駕する走りを見せ、「軽いが速い」というこれまでの常識を覆し、「重いのに速い」という新たなベクトルを提示した。これは単に重さを許容した訳ではなく、前後重量配分や各輪への荷重を緻密に設計し、路面状況が変わっても安定したトラクションを確保するという考えがベースにあった。
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また、価格を777万円〜と手に届く範囲に抑えるため、高額な軽量素材や空力デバイスの装着は避けられた。その厳しい条件のなかで、どんな場面で、誰が乗っても性能を引き出せるように導き出されたのが、各輪にあらかじめ最適な荷重をかけることで、路面状況が刻々と変化する状況でも常にグリップを得る手法なのだ。GT-Rの1.7トンの車重にはそうした理由があったのだ。