【試乗】「これスリックか?」AMG GTは血の気が引くほどの強烈な速さと曲がり! 富士スピードウェイで全開走行を試した!! (2/2ページ)

AMGのパフォーマンスの高さを実感

 まずは最強のGT 63 S Eから。能ある鷹は爪を隠す、の如くピットロードはハイブリッドらしいモーター走行で静かに流れていく。加速の鋭さは、気が遠のくほどの実体験をした身として、レーシングコースに合流してアクセルペダルを踏み込む力にためらいもあるが、幸い先導ペースカーがいるので、ある程度加速Gに慣れてから勇気を振り絞ることにする。

 走り慣れた富士だけに、各コーナーまでの加速感、コーナーでの挙動などクルマの素性を探るうえで基本的な判断基準がある。いえることはまずAコーナー(コカコーラ)までの到達速度が軽く200km/hオーバーという尋常じゃない速さだ。

 続く100Rのコーナリングは4WDということを含めてもアンダーステアの度合いは極めて少ない。100Rのクリッピングポイントから先はフロントタイヤからのスキール音発生と同時にアクセルをわずかに絞るだけで、狙ったコーナリングラインに容易に戻る。路面を確実に掴むグリップ力、ロードホールディングの素晴らしさは純正装着として専用開発したミシュラン・パイロットスポーツ S 5の運動性能によるもの。

 それを如実に感じるのが100Rと、もうひとつは最終コーナー手前のツイスティな区間だ。13コーナーやGRスープラコーナーは、それぞれ立ち上がりで曲がりきれていないのにアクセルを必要以上に踏むアンダーステアを誘発するポイント。ここでもGT 63 S Eはまるでスリックタイヤを装着しているかのようにロングノーズがインを向く。

 あとからの情報で大いに頷けたのは、このクルマは後輪操舵システムを備えていて、100km/h以下の車速では、後輪舵角は最大2.5度まで前輪とは逆位相、つまり低速コーナーはより小さいRで曲がれるように後輪が前輪とは逆方向に向く。

 この操縦感覚はまるでスリックタイヤを履いているかのようなグリップ感でスルッとコンパクトに曲がる。アンダーステアを感じないのはタイヤのグリップ力とともに大いに貢献していた。

 最終コーナーを3速で立ち上がると全9速の各ギヤは4/5/6速とアップテンポに吹け切りながら凄まじい加速と矢のように直進する安定性が続き、7速304km/hに達したところで第一コーナーに向けて、まだ余裕を残しながらのブレーキング開始。

 それはDレンジのままでも、パドルを手動操作しても同様に誰でもイージーに体感できる速度域だ。思いどおりに曲がり、加速と急減速して1周があっという間に終わると1分54秒80。これが速いか否かはともかく、標準タイヤでさらりと出せるところにロードカーとしてのGT 63 S Eの潜在能力の高さを確認した。

 同時に試乗したGT 63クーペは、AMGといえばエンジンチューンの純粋な4リッターV8エンジンを搭載するモデル。乗るとエンジン車らしいスッキリと軽快な速さがスポーツカーらしい。スペックを見れば0-100km/hは3.2秒とこれも血の気が後方に行く感覚。

 富士での最高速も287km/hをサラリとマークして、スーパースポーツ軍団の顔色を失わせる。操縦のメカニズムはGT 63 S Eに準ずるから、意図したとおりに曲がり、止まる感触と遜色なく、モーター/バッテリーぶんの重量なのか、軽快さは加減速とフットワークにもいえる。

 いずれもロードカーとしてのAMG GT 63の話。この能力を引き出すのは、日本ではサーキットしかあり得ないところが、オーナーの身になると歯痒いところ。逆をいえば、普段は足としてフレキシブルに使い倒し、サーキットのスポーツ走行時間で能力の一端を引き出す。スーパースポーツ含めてこのクラスを日本で生かすには、それが最善の方法だ。


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