天下のフェラーリだってやっちまうことはある! なぜか不人気な「V12+4座」モデルの悲哀 (2/2ページ)

4WDという新たな武器を得たV12フェラーリたち

 612スカリエッティの後継車となったのは、そのスタイルを新たにシューティングブレークとした、2011年デビューの「FF(フェラーリ・フォー)」だった。

 そのネーミングに掲げられるフォーとは、キャビンがそれまでの2+2からフル4シーターに変更されたことと、フェラーリとしては初となる4WDシステムを搭載したことを意味するもの。つまり、FFは612スカリエッティの「事実上の」後継車ではあるものの、それとはまったくコンセプトの異なるモデルだったのだ。

 発売時にフェラーリがとくに強く主張したのは、それが世界最速の4シーターカーであるということだったが、やはりあまりにもドラスティックに変わったそのボディデザインに抵抗感を抱く者も多かったのだろう。そのビッグマイナーチェンジ版として、2016年に発表された「GTC4ルッソ」を含め、やはり人気は同じV型12気筒モデルでも2シーター車には及ばなかった。

 だが、改めて考えてみると、フェラーリの2+2GT、そしてその市場を受け継いだFFとGTC4ルッソは、そのどれもが豪華で実用的なV型12気筒モデルとして、きわめて魅力的な存在であったことは確かだ。さらに、人気薄ということは、現在の中古車市場での売買価格を見てもわかるように、あるいはそれはV型12気筒フェラーリのなかでもっともコストパフォーマンスに優れたモデルといえるのではないだろうか。

 参考までに現在のフェラーリからは、ラグジュアリーな2+2GT、あるいは4シーターモデルはリリースされていない。その役割を受け継いだのは、SUVスタイルをもつフェラーリ史上初の4ドア4シーター、「プロサングエ」。

 フェラーリ自身がパフォーマンスとドライビングプレジャー、そして快適性と機能性を完璧に調和させたと強くアピールするこのプロサングエは、はたしてこれからの市場でどのように評価されていくのだろうか。そしてこのプロサングエが、今回紹介したかつての2+2や4シーターといったモデルたちに、もう一度注目を集めさせるきっかけとなってくれることを大いに期待したい。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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