「S+」は「MT」じゃなくても走る喜びを体感できる手段! 新型プレリュードの開発責任者に気になることを全部聞いてみた (4/4ページ)

パワートレインにもこだわりアリ

──パワートレインは、シビックタイプRほど速くはないけど、シビックRSよりは速い、というイメージでしょうか?

山上さん:サーキットを走るようなクルマではありませんので、シビックタイプRのようなタイムは当然出ませんし、あれほどの馬力はありません。RSは変速やターボのラグがあり、それがまた楽しみではあるのですが、プレリュードはそれがありませんので、発進加速やコーナーの立ち上がりはスムースです。なので、違うベクトルでの楽しさはありますね。タイプR乗りの方にも気に入っていただけると思います。

 今回搭載しているのは2リッターの直4NAエンジンですが、バランサーシャフトも付いていますので、S2000のように9000rpmというわけにはいきません。ですが、昔のホンダのNAエンジンを思い浮かべる方がいらっしゃるんじゃないかとも思い、そういう味付けにはしています。

 一方でハイブリッドの強みは、モーターとバッテリーでアシストできることにあるので、低回転域から大きなトルクで加速できます。ある時はターボあるいは大排気量エンジンのようなトルク、ある時はNAの気もちよさ、それを「Honda S+ Shift」のモード切り替えのなかで実現できています。1台のなかで5台くらいの異なるパワーユニットが載っているイメージですね。

──エンジン自体はまったくの新開発ですか?

山上さん:ハードウェアはシビックe:HEVからのキャリーオーバーですが、信頼性はしっかり確保したうえでパワーアップしています。現行シビックe:HEVも非常にお客様からの評判がよく、パワーユニットのポテンシャルも非常に余裕のある使いかたができています。それがスペックに表れていないのは、それで充分だからということでもありますが、やみくもに馬力やスピードを追い求めるとバランスが崩れますので、今回もちょうどいいバランスにしています。ただし制御系はまったくの別物で、従来のよさを保ったまま、まったく新しいパワーユニットになっています。

──ホンダさんの場合、初代フィットからはじまった実用性重視のL系エンジンがCR-Zでスポーティに進化したように、基本設計は変わらずとも、進化やチューニングの過程で大きく変化することがよくあるという印象をもっています。

山上さん:今回も生のエンジン音は綺麗ですし、スポーツモードではさらにサウンドコントロールを加えていますので、気もちいい音になっていると思います。もともとのエンジン音が綺麗にできていないと、そこに音を加えても汚くなりますので。今回はとくにお客様に五感で楽しさを味わっていただくことを大事にしていますので、そのなかでクルマのエンジン音は大切な情報と位置づけています。視界や体感G、ステアリングの手応えもそうですね。新しく作り替えればよいということではなく、磨き上げればまだまだポテンシャルがあるものもあります。

──それで安価になればいうことなしですね(笑)。クーペで台数も出ないでしょうから、なかなか難しいとは思いますが……。

山上さん:クーペを作るのはなかなかチャレンジングなんですけど、それをしなければ普通のクルマしか作れなくなりますよね。

──ホンダさんとしても、スポーツカーと走りの楽しさを今後も大事にしていきたい、ということですね。

山上さん:私もそうですが、スポーツカーは気もちを若々しくしてくれますよね。お子さんが巣立って経済的にゆとりができた時に、もう一度若いころに戻って、昔走ったところに行ってみると、気もちが若返ると思います。親子で出かけ、お子さんが運転してもいいですよね。新型プレリュードなら、そういったスペシャルティカーならではの豊かな暮らしが実現できるのではないかと思います。広いクルマがよければ、そういったクルマを選んでいただければ。

──ホンダさんはどちらの両極端も、すごいものが作れてしまうメーカーだと思いますが(笑)。新型プレリュードの発売を楽しみにしています。ありがとうございました!


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遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
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