【試乗】スポーツカーばりの舗装路の走り! ラリー車なみのオフロードの走破性! ランドローバー・ディフェンダーOCTAは歴史を塗り替えるレベルの究極SUVだった!! (2/2ページ)

悪路で魅せる圧倒的ポテンシャル

 さて、次はいよいよ本日のクライマックス。日本のモータースポーツの歴史が始まった伝説の場所、「浅間サーキット」へと足を踏み入れる。群馬県吾妻郡長野原町に位置するこの場所は、単なるクローズドコースではない。1955年に開設され、日本で初めての本格的なモータースポーツ競技として「浅間火山レース」が開催された地だ(オートバイのレースであった)。

 当初は1周約9.35kmにも及ぶ、オフロードの「浅間高原自動車テストコース」として開設され、当時は多くのバイクメーカーが開発の場として活用していたという。故・高橋国光氏からも当時の過酷な様子を聞かせてもらったことがある。

 現在は1.98kmほどのオフロード専用コースとして一部が残っているのみだが、モータースポーツにかかわった者として、この聖地を走ることは感慨深いことなのだ。

 試乗コースは深い轍、Rの小さなタイトターン、砂利が覆うストレートセクションなどさまざまな路面状況が用意されていた。とはいえディフェンダーOCTAの価格は2000万円以上だ。そんな高額車でここを走っていいのか躊躇うほどだったが、一般道で感じていた驚きは、オフロードに入った瞬間に驚愕へと変わった。

 深い轍に突入しても、OCTAはまったく動じることなく進む。6Dダイナミックスの本領が遺憾無く発揮され、油圧制御されたダンパーが個々に伸び縮みし、路面との接地を最大限に保つ。通常であれば、大きくロールしたり、タイヤが空転するような場面でも、OCTAは常に四輪が地面を掴み、力強いトラクションを発揮する。

 一般道では試せなかったフルスロットルを試すと4.4リッターV8ツインターボエンジンの最大トルクが発揮される。路面が滑りやすい場所でも、電子制御ディファレンシャルとトラクションコントロールを緻密に連携させ、最適な駆動力を配分するため、一切の躊躇いがない。

 通常ならトラクションコントロール機能をオフにさせて試したいところだが、OCTAの俊敏性はその必要をまったく感じさせなかった。それどころか、2610kgの巨体がラリー車のようにスライドとトラクションをコントロールし走らせる楽しさを感じられるほどだった。

 もちろん室内はそれでも快適で、シートのサポート性も優れ疲労も少ない。

 極めて長いホイール上下のアーティキュレーショントラベルと、それを最大限に活かす6Dダイナミックスの組み合わせは、オフロードにおける走破性だけでなくコントロール性をも完璧に成し遂げ、絶対的な優位性をもたらしてくれる。あまりにも自由自在に走らせられるので、高価格に対する不安は吹き飛んだ。これならコースアウトする心配はないと確信して走れたからだ。

 浅間サーキットのオフロードコースを走り終え、OCTAは単なる高性能SUVではないことをを実感した。一般道での圧倒的なラグジュアリー性、そして巨体からは想像できないほどの扱いやすさとロールの安定感。浅間サーキットの厳しいオフロードコースで証明された、比類なき路面追従性と走破性、アジリティの高さ。これらすべてが、ディフェンダーOCTAという1台のクルマに凝縮されている。

 ディフェンダーの歴史を塗り替えるといっても過言ではないほどに、OCTAは「究極のオールラウンダー」としてSUVの新たなベンチマークとなるだろう。今回は試せていないが、最大渡河水深は従来の900mmから1000mmとなったことも、クロスカントリーでの強さを物語っている。

 このOCTA、標準仕様のままで世界一過酷なパリ・ダカールラリーにも挑むという。初回販売の300台枠はすでに完売しているそうだが、2026年モデルはこれから受注が始まるとアナウンスされていた。


この記事の画像ギャラリー

中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報