この記事をまとめると
■BEVブランド「NETA」を有するHOZON AUTOが破産手続きに入った
■タイで大人気ブランドだったが現在は政府から補助金が差し止められている
■NETAに限らず今後は中国系BEVブランドが各国で苦境を強いられる可能性がある
中国の大手EVブランドが倒産!?
2025年6月中旬、中国のBEV(バッテリー電気自動車)ブランドNETA(哪吒汽車)を展開するHOZON AUTO(合衆新能源汽車)が破産手続きに入ったというニュースが世界を駆け巡った。すでに2024年から大規模なリストラの実施や賃金の未払いなども続き、それらに関する訴訟も抱えており、今回の破産への流れは織り込み済みだったとの話も聞いている。
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HOZON AUTOは中国浙江省にて設立された新興BEVメーカーであり、ローコストBEVなどとも呼ばれることもあるが、スペックを抑え気味にすることで、車両価格を抑えたNETA-Vを主力商品として生産及び販売してきた。当初はそのような戦略も功を奏し、中国国内でのBEV販売では4位にまで浮上する勢いがあった。
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筆者はそのNETAの成功の一端をタイ市場で見ることとなった。というのも、2022年あたりから中国系メーカーがBEVを看板車種にして相次いでタイ市場に進出するようになったからだ。これはタイ政府が2022年からEV3.0(その後3.5も登場)というBEV普及策を導入したことが大きい。ICE(内燃機関)車として2014年からすでにタイに進出していた上海汽車系のMGがいち早く「MG ZS EV」をタイでラインアップするなか、BYDオート(比亜迪汽車)は、タイ市場に進出するやいなや破竹の勢いで販売シェアを伸ばしていった。
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そのなか、2023年にローコストBEVとなるNETA-Vでタイ市場に進出したNETAは、一定所得以上の自動車ユーザーの間でお試しBEVともいえる手ごろな価格もありセカンドカー需要などで、まさに爆発的に売れるようになった。2024年2月28日からはタイの現地生産工場が本格稼働し、NETA-VもNETA-VⅡというバージョンアップモデルまでラインアップするようになった。
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しかし、前述したEV3.0やEV3.5などの政策により、タイ政府より多額の補助金を受けていたNETAのタイ現地法人である、NETAタイランドに対し7月14日、タイの財務副大臣が補助金の交付停止を発表。さらに「深刻なペナルティを課す用意がある」と地元メディアが一斉に報じている。補助金交付停止については交付条件にあった生産計画が未達成となっていることへの措置であり、さらにペナルティが課されるようである。
地元メディアの報道によるペナルティの一例としては、1台あたり15万バーツ(約68.4万円)に利息を加えた額の補助金返還、免税扱いとなっていた物品税(約6%)の返還に加え2倍の罰金、さらには月1.5%の延滞金と同額の罰金など非常に厳しいものとなっている。
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タイ在住の事情通は、「まずタイ政府の態度が、意外なほど常識的な毅然としたものであったことに驚きました。NETAに限らず、ほかの中国系メーカーの生産/販売計画も明らかに破綻しているといっていい状況なので、NETAだけに終わらず、いままで栄華を誇ってきたタイでの中国系メーカーについては地獄絵図(去るも地獄、残るも地獄/タイ国内では中国系BEV同士での乱売合戦が過熱している)が展開されそうですね」と語ってくれた。
タイ政府もNETAに限らず、NETAに続いて似たようなことが続発する前提で、今回NETAに対し毅然とした態度を見せたようにも見える。つまり、NETAに続けは許さない(補助金受けっぱなしでタイからの撤退といったこと)という、タイ政府の態度表明を兼ねているように思える。「11月末から12月上旬にバンコク近郊でモーターエキスポ2025が開催されますが、開催直前に中国メーカーの多くが出展をキャンセルし、会場に違和感のある空間が続出するかもしれません」とは事情通。
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タイ政府の推しもあり、都市部を中心に中国系を中心としたBEVが、タイ国内では売れるようになったのだが、そのブームも意外と早く終焉を迎えることとなったようだ。タイでは比較的短期間で新車への乗り換えをするひとも目立つのだが、タイに限ったことではない要素として、BEVの再販価値の低下速度は早く(乱売も影響か)、さらに自動車保険料が著しく高い(もしくはそもそも引き受けない保険会社もある/中国ほか諸外国でもこの傾向は見受けられる)ということも、ブームの終焉を加速させたようである。