セダンが絶滅危機なのは日本車だけじゃない! 欧州車も飲み込む全世界SUV化の波 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■セダンオーナーがクルマを乗り換えようと思ったときセダンの選択肢が少なくなっている

■クロスオーバーSUVがセダンユーザーの受け皿となっている

■多用途性とは縁の薄いセダンは今後もますますレアな存在となっていく

セダンからセダンへの乗り換えが難しい

 先日知人から、「トヨタSAIに乗っているひとが新車に乗り換えたいらしいのだけど、何かおすすめはあるか?」と聞かれたのだが、その場ですぐに「これだ」というクルマを思いつくことができなかった。そのとき改めてふたりで「セダン自体がほとんどないんだよね」と、現状に気がつくことができた。

 各日系ブランドのウエブサイト上にてセダンを確認すると、トヨタがカローラ アクシオ(本稿執筆時点ではまだラインアップされていた)、カローラ セダン、プリウス(メーカーはセダンに分類)、クラウン セダン、MIRAI。日産がスカイラインのみ。ホンダがアコードとシビック(プリウスがセダンというのなら)。マツダがマツダ3セダン。スバルがWRX S4。レクサスがLS、ES、IS。そして三菱、ダイハツ、スズキはセダンをラインアップしていなかった。

 昭和のころはほとんどのメーカーでカローラサイズ(少し前の5ナンバーサイズのころ)のセダンをラインアップし、「ファミリーカー=カローラサイズのセダン」という時代もあった。1960年代、モータリゼーションとも呼ばれ、自家用車が急速に普及していったころには、2ドアセダンに加え、それまでクラウンクラスあたりに許されていたともいっていい贅沢な選択ともされていた4ドアセダンがコンパクトモデルのなかでもラインアップされるようになり、自家用車の爆発的な普及に拍車をかける一因になったともいわれている。

 2ドアセダンでは前席シートを倒して(背もたれだけや座面ごとなどさまざま)乗降することになり、ドアも幅広く、使い勝手もいまひとつであった。助手席背もたれを倒すと座面が自動的に前部にスライドする助手席ウォークイン機構などと呼ばれる装備が、2ドアモデルでは便利装備として重宝されていた。

 1970年代初頭に初代ホンダ・シビックがデビューするのだが、初代シビックに大きなリヤゲートをもつハッチバック(3/5ドア)が登場すると、そのタイミングで各メーカーがこぞってハッチバック車をラインアップするようになり、コンパクトセダンとともにファミリーカーとして人気を二分するようになった。5ドアならドアを4枚持ち、大きなテールゲートを開けると広がる荷室スペースは居住スペースと一体化され、後席背もたれを倒せば荷室が広がるという利便性の高さもウケて人気が高まっていった。

 当時、「欧州ではハッチバックでアメリカはセダン」ともいわれていた。日本のような車庫証明もないので、クルマを路上駐車することが多かったのがアメリカでは、治安が悪いなかいまほどクルマ防犯対策が施されていなかったこともあり、ガラスを割って車内のもの(カーステレオなど装備も)が盗まれる被害も多発していた。ハッチバックはテールゲートのガラス面積も大きく、荷室が居住空間と一体になっているので、犯罪を誘発するということもあり、アメリカではセダンやクーペなど、トランクをもつスタイルのクルマを好んで乗っていた時代が長く続いていたのである。

 その後、日本だけ見ても、SUV(パジェロ的なもの)、ステーションワゴン、ミニバンと、ファミリーカーのトレンドは変化を見せ、いまでは「ミニバン=ファミリーカー」が定着するなか、クロスオーバーSUVがそれまでのセダンユーザーの受け皿となっている。

 手ごろなボディサイズのセダンとなれば、ほぼカローラ セダン一択(アクシオは間もなく生産終了)となっており、現状では各メーカーでラインアップが豊富なクロスオーバーSUVに流れるのが自然の流れといってもいいだろう。

 セダンユーザーは年齢層も高く、ダウンサイズして乗り換える傾向もあるので、いまではコンパクトサイズのクロスオーバーSUVが充実するなか、レクサスLBXなど、ラグジュアリームード満点のモデルも目立ってきている。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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