最後の砦の輸入車でもセダンの先行きは不明
現状でセダンのラインアップが目立つのは、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったドイツ系プレミアムブランドとなる。コンパクトからフルサイズまで日系モデルより充実しているものと筆者は感じている。
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しかし、すでにメルセデス・ベンツAクラスセダンは「ファイナルエディション」を残すのみで生産終了となってしまった。一方で、BMW2シリーズ・グランクーペ(4ドアクーペとも表現もできる流麗な外観をもつモデル)は、日本国内では意外なほど人気の高いモデルとなっている。アウディは、現状コンパクトなA3セダンなどもあるが、2026年に新たなICE(内燃機関)車の新型モデルの投入はないとしており、電動化を進めるなかで、セダンタイプのラインアップは今後も縮小傾向になっていくのではないかと考えている。
ドイツ系では最後まで手厚かった2ドアクーペのラインアップ縮小が進んでおり、今後はセダン系のラインアップ縮小というのも目立っていきそうである。
ボディタイプではなく、メルセデス・ベンツではコンパクトクラスのAクラス自体を現行モデルで終売することを発表している。終売時期は延命されたようだが、現行モデル限りというのは変わらないようだ。
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「セダンがほしい」という話には、輸入車をすすめることもあるのだが、年配のひとが多いこともあるのか、輸入車は範疇外というケースが筆者のまわりでは多い。
今回、レクサスLBXはどうかとすすめてみた。単純にレクサスという高級ブランドで手ごろなサイズと価格だからというだけではなく、トヨタブランドで同サイズとなるヤリスクロスは新規受注停止を繰り返し、発注できたとしても納車までに時間を要することがほとんどだが、LBXは数カ月で納車可能となり、供給体制ではヤリスクロスほど混乱はしていない。もちろん車両価格はヤリスクロスよりも高くなるのだが、トヨタ系ディーラーに比べると残価設定ローンの金利が低く、そして再販価値が高いので月々の支払い負担はヤリスクロス並みかそれ以下ともいっていい。それなのに「小さくても間違いなくレクサス」という作りのよさが伝わってくる。
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あとはスズキ・フロンクスもインドではスズキ系ディーラーでの上級店「NEXA」扱いのモデルとなるので、レクサス並みとまではいかないものの、ラグジュアリーイメージの強いキャラクターとなっている。個人的には両車ともにドアの開閉音まで意識して作られているように感じて気に入っている。
コンパクトクロスオーバーSUVが、いまやどのメーカーでも登録車では販売ボリュームが高く、ラインアップされるモデル数も多いので、LBXやフロンクスに限らず自分の好みにあったモデルを探しやすくなっている。サイズにかかわらずクロスオーバーSUVは、世界市場でも販売主軸車種となるので、日系ブランド各社でもかなり気合の入ったクルマ作りをしている。そのなかで、現状セダンを乗り続けているユーザーも囲い込めるように開発段階から意識されているようだ。
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セダンといえば、いまや世界的にも政治家などVIPの移動用か、タクシーやライドシェアなど業務用での需要が中心。そのような界隈でも、VIP向けではアルファードを中心とした高級ミニバンや、ランドクルーザーなど大型SUVへニーズの中心が移りつつある。タクシーやライドシェアでも3列シートをもつMPV(多目的車)やステーションワゴンが東南アジア地域や中国では目立ってきている。
シートを3列にできたり荷室を拡大できたりなど、多用途性とは縁の薄いセダンは、今後ますますレアな存在となっていくのが既定路線なのは間違いないようである。