この記事をまとめると
■ミスファイアリングシステムはアクセルオフ時に生じるターボラグを解消するための機能
■WRCの規則のために市販車にもミスファイアリングシステムは備わっていたが封印されていた
■ECUの書き換えでミスファイアリングシステム使用とすることも可能だがデメリットも多い
ミスファイアリングシステムどんなシステム?
2025年9月13日(土)・14日(日)に、富士スピードウェイで30周年記念の公式サーキットイベント 「頭文字D 30th Anniversary 2days」が開催されるほど根強い人気のある「頭文字D」。その作品中、ライバルとして登場した須藤京一のランサーエボリューションIIIの武器となった「ミスファイアリングシステム」を覚えているだろうか。
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ミスファイアリングシステムは、ターボ車がバックオフ(アクセルオフ)したときに生じるターボラグを解消するためのシステムで、グループA時代のWRCマシンに盛んに取り入れられたもの。当時は、WRCのベース車となるスバルのインプレッサWRX STi(GDB以降)、三菱のランサーエボリューション(CE9A以降)、トヨタのセリカGT-FOUR(ST205)などには、市販車にも標準装備されていた。
これは当時のWRCで、市販車にないシステムを追加することはできないレギュレーションがあったためで、市販車にはシステムそのものは導入されていたが、それをECUのプログラムで封印して販売する形をとっていた。
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そのミスファイアリングシステムの説明をする前に、ターボラグについておさらいを。ターボチャージャーは、排気ガスの力でタービンをまわし、コンプレッサーホイールで空気を圧縮してエンジンの吸入空気量を増やす装置。エンジンが高回転でまわっていれば、排気ガスが勢いよく流れて、タービンも力強くまわることができるが、スロットルを閉じるとエンジンの回転も下がり、排気ガスの流量も減る。
単純計算で、6000回転でまわっていたエンジンが、アクセルオフでアイドリング=1000回転まで落ちれば、排気ガスの排出量も6分の1になるわけで、タービンの回転も一気に落ちる。一度回転が落ちてしまうと、空気にも質量があるので慣性が働き、アクセルを踏み直してもすぐには勢いを取り戻せない。この回転が落ち込んだタービンが、もう一度元気よくまわりはじめるまでのロスタイムを、ターボラグという。
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山岳部を走るラリーカーだと、タイトコーナーでアクセルを全閉にする機会も多いので、タイムを稼ぐためには、ターボラグを少しでも減らしたい。そこで考え出されたのが、ミスファイアリングシステムという仕組みだ。