この記事をまとめると
■6代目シビックに搭載された「ホンダマルチマチック」は世界初の高出力対応CVTだった
■燃費改善を実現しCVTの普及にも貢献したが弱いクリープやジャダー発生が問題化
■保証延長や無償交換が行われたが中古車選びの際のリスクとなっている
CVT普及の立役者のひとつはホンダだった
いまでこそ国産車のなかではすっかりメジャーなトランスミッションとなったCVT(Continuously Variable Transmission=無段変速機)。その普及の火付け役のひとつとなったのが、ホンダが1995年9月発売の6代目シビックより搭載を開始した「ホンダマルチマチック」(HMM)だ。
CVTそのものは、それより遥か以前から2輪スクーター向けなどで存在しており、4輪車向けもオランダのDAFという自動車メーカーを創業したひとり、フップ・ファン・ドールネが開発したゴムベルト式CVT「ヴァリオマチック」が、1958年発売のコンパクトカー「DAF600」以降の各乗用車に搭載されていた。
その後、ゴムベルトよりも耐久性の高いスチールベルトを用いたCVTも、別途設立されたVan Doorne’s Transmissie社が開発を開始し特許を取得。フップ・ファン・ドールネが1979年に死去してから8年後の1987年、1リッターカーの初代スバル・ジャスティなどに設定され、実用化に至っている。
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「HMM」も、Van Doorne’s Transmissie社が特許をもっていたこのスチールベルトを採用。そのうえで世界初の高出力対応型、具体的には1.5リッタークラスのガソリンNA(自然吸気)エンジンまで対応可能なCVTとして開発され、6代目シビックでは130馬力と14.2kg-mを発するD15B型1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンとの組み合わせが設定された。
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その最大の特徴は、湿式多板発進クラッチをドリブン軸に配置したこと。
CVTは本来その構造上、遊星(プラネタリー)ギヤと油圧制御装置とトルクコンバーターを組み合わせた、それまでにもっとも普及していたステップATのようなクリープ現象が存在しない。つまり、Dレンジに入れてもブレーキペダルから足を離しただけでは前進せず、ごく緩い上り坂でもしっかりアクセルペダルを踏み込まなければ後退する。
それを解決すべく前述の構造を採用し、擬似的なクリープ現象の設定を可能としたほか、停車時もプーリーを回転させ、従来のCVTでは困難だった急停車直後の滑らかな発進も実現したのが、「HMM」だった。
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その後、1998年9月に発売された初代HR-Vからは、上り坂での燃費改善や下り坂でのブレーキ操作軽減を主眼とした降登坂制御「プロスマテック制御」を採り入れた「ホンダマルチマチックS」(HMM-S)に進化。2001年6月発売の初代フィットなどにも採用されたことで、CVT普及の立役者となった。