最大の特徴が仇となりトラブルを生んだ
だが、2007年10月発売の2代目フィットからは、パラレル式ハイブリッドシステム「IMA」との組み合わせを除いて、トルクコンバーター付きのCVTに順次置き換えられていく。
その理由として考えられるのは、大きくわけてふたつある。ひとつは運転のしやすさ、もうひとつは信頼性の問題だ。
ホンダが「HMM(-S)」でドリブン軸配置の湿式多板発進クラッチを採用したのは、トルクコンバーターの廃止によるスリップロスの低減=燃費改善も大きな理由のひとつ。しかし、これによって実現したというクリープ現象は、坂道発進ではパーキングブレーキを併用しなければならないほど弱いものだった。
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当時のステップATが発するクリープ現象は、昨今のステップATと比較しても強すぎるほどなので、それと「HMM(-S)」を比べれば、落差はさらに大きい。また、どちらかといえば一般的なAT車よりもMT車に近い運転感覚になるため、MT車が嫌い、あるいは不慣れな人ほど運転しにくく感じられたはずだ。
そして信頼性だが、クラッチを用いる多くのトランスミッションに共通する弱点として、長い期間と走行距離を重ねるほど、クラッチディスクの摩耗による不具合が避けられなくなる点がある。とりわけ「HMM(-S)」は、クラッチディスクの摩耗、あるいはトランスミッションオイルの劣化によっても、発進時にジャダーが発生する可能性が高い。
そのため、ホンダは2010年3月より初代フィット(同アリア)、初代モビリオ(同スパイク)、エアウェイブの「HMM-S」を対象に、保証期間を延長(新車登録より5年間か走行距離10万kmまでのいずれか早いほう→同7年間か16万km)したうえ、ジャダーが発生した車両にはトランスミッションオイルorクラッチAssyの無償交換を実施した。
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筆者自身、前述のモデルのなかでセカンドカーとして中古車の購入を検討している車種があるのだが、このジャダーがほぼ不可避であり、かつ実際の振動も車外から聞こえるほど激しいのを知っているからこそ、二の足を踏んでいるのが実情だ。
購入早々クラッチどころかトランスミッション全体の交換が必要になり、多額の出費を強いられる……だけならまだマシなほうだろう。部品がなかなか入手できずに車庫や月極駐車場で長期間放置せざるを得ず、その間に税金や保険代、駐車場代などが容赦なく取られていく可能性も十分に考えられる。これから中古車を購入するならば、その覚悟を決めてからにすべきだと、私自身肝に銘じている。