NISMOが名機「L型エンジン」のDOHC化キットを発売って本気か! 60年前のエンジンを蘇らせるワケ (2/2ページ)

性能アップしつつ現代的にアップデート

 エンジンの構成としては、L28型のシリンダーブロックをベースに加工を加え、専用のクランク、ピストン、コンロッドを組み合わせて2949ccまで排気量アップ。そこに専用開発の4バルブDOHC化キットを載せたもので、コンプリートエンジンの型式名として「TLX型」となっています。

 ボア×ストロークは89.0mm×79.0mmで、ベースのL28型からボアだけ3mm広げていますが、クランクシャフトは鍛造となっていて、最高回転数が7500rpmとの記述もあるので、おそらくフルカウンターの専用開発品だと思われます。最高出力が221kW(300馬力)以上、最大トルクが294Nm(30kg-m)以上とのことで、ターンフローヘッドのL型エンジンでもフルチューン仕様でそれ以上出している例もあることから、少し控えめに出した数字に思えます。

 最大の特徴であるDOHC化ヘッドですが、構成は1気筒あたり4つのバルブをもつ性能追求仕様で、ヘッドのボリュームが小さいことから、バルブの挟み角が狭い現代的な設計の傾向が見て取れます。しかし、バルブの傘径はIN:φ36.5/EX:φ31.2と、RB26DETT型に近い数値に設定されていることから、かなりハイフロータイプの性能追求志向であることは間違いないでしょう。

 注目は2本のカムシャフトの駆動方式です。現在主流なのはタイミングチェーン1本で2枚のカムスプロケットを直接駆動する方式ですが、このTLX型では、いちど中間にアイドラースプロケットを介してから、もう1本のチェーンで2枚のカムスプロケットをまわす方式を採用しています。

 これは同じ日産のKA型エンジン等に採用されている方式で、減速できるのでカム側のスプロケット径を小さくできるのがメリットです。部品の雰囲気がKA型に似ていることから、純正部品の流用が可能な仕様にしている可能性はあるでしょう。

 バルブの駆動は直動式のインナーシムタイプで、これもRB26DETT型などの性能追求志向タイプに採用例が多い仕様です。外観で気になったのはカムカバー固定用ボルトの本数がやたら多い点で、いかにも試作品の雰囲気がしますが、ヘッド側がなんらかの理由でデリケートなつくりになっているせいでしょうか。

 点火は現代らしくDI(ダイレクトイグニッション)化され、もとのデスビにはクランク角センサーを装着。インジェクション機構とあわせて専用の(ニスモ製?)ECUで制御するようです。

 吸気はφ45径の6連スロットルとマルチポートインジェクションタイプの燃料噴射がベースのようですが、インテークマニフォールドはソレックスやウエーバーなどのキャブレターにも対応しているようなので、お好みでどうぞということのようです。

 NISMOブランド40周年の記念となる2025年に、あえて60年前にリリースされたL型エンジン用のDOHC化キットをリリースするという、奇行にも思えるほどのプロジェクトを実行に移してくれました。

 内容も、究極の性能追求ではないものの、レース用途にも耐える本格的な仕様でのリリースで、NISMO製品だから部品の供給も安心という点も大きな魅力となるでしょう。

 さて、そこでいちばん気になるのは価格ですね。発表はこれからという段階ですが、これだけの内容ですからコンプリートエンジンでザックリ400万円は下らないでしょう。そこに点火系や吸排気系、制御系と補機類を合わせて500万円〜というのが筆者の見立てですが、実際はどうなるでしょう。

 発売予定の2025年秋までもうカウントダウンの時期ですので、発表は間もなくでしょう。


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往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

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