現代でも個性豊かな軽自動車の登場を期待したい
成熟した令和の日本の自動車市場においてはなかなかステップバンやバモス・ホンダのようなユニークモデルは出てこないようなのだが、そのなかでもユニークなモデルはないかなあと考えていたら思い浮かんだのが「スズキ・スペーシアベース」である。
スペーシア・ベースは2022年8月にデビューし、いまもなおラインアップされている。先代スペーシアシリーズをベースとした商用車がスペーシアベースとなる。筆者がスズキディーラーへ行き、軽自動車を探していると伝えると勧められたのがスペーシアベースであった。スペーシアの標準仕様では女性向け色が目立ち、カスタム系ではギラギラが強い、ギアに乗るほどアウトドア志向ではないと話しているとベースを勧められた。
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ウェブサイトをみると、「自分だけの移動基地をつくろう」というキャッチが踊っており、セールスマンいわく、「少年の心溢れる、大人の男をくすぐる」のがスペーシアギアとのこと。それもあるのかギラギラしていないものの(メッキ加工処理していない)カスタム系風の顔つきを採用しているとも説明してくれた。
搭載されているマルチボードの使い方次第で車内を移動オフィスや移動販売車、はたまた宿泊スペースなど自由自在の空間設計を行うことを可能としている。
この手のクルマはいままでもなかったわけでもないが、とかくアウトドアレジャーを強調するところで、インドア派の筆者は興味がなかったのだが、移動オフィスにも積極的に対応できる室内空間や装備内容について説明を受けると俄然興味が湧いてきた。秘密基地という表現が似合うような空間設計ができるベースは、「ガキオヤジ(子ども気分の抜けないオジサン)」である筆者は心を大きくくすぐられた。
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軽乗用車が初回車検は初度登録から3年後(3年車検)となるところ軽商用車は2年車検となってしまうのだが、販売現場では「そこも考え方次第」として、車検有効期間が短いので車検点検整備費用のセーブも可能だと説明してくれた。また車検有効期間に合わせた24回払いでの残価設定ローンも用意されているとのことであった。
スズキは、初代アルトでは乗用車風スタイルなのに当時物品税のかからなかった、軽商用ボンネットバンとして、47万円という車両価格もあり大ヒットさせたことのある知恵者だけに、スペーシアベースのようなプロダクトを、令和のいまでも進められたのかなあと考えている。現状の商用バンでは、初代アルトがデビューした時ほど、維持費の面では軽乗用車より圧倒的にお得とはいえないのが実状となっている。
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ホンダは2018年に軽商用バンとなるN-VANをデビューさせているが、見た目やキャラクターはスペーシア・ベースに近いものを感じるのだが、ウエブサイトを見る限りではほぼ商用車としての使い勝手のよさばかりが紹介されており、スペーシアベースほどメーカーとしては踏み込んでいないようにも見えた。
ステップバンが新車で販売していたころとは異なり、いまや新車販売全体に対して4割弱が軽自動車となっている(圧倒的に増えている)。70年代はホンダを中心にダイハツ・フェローバギーや三菱ミニカスキッパー、スズキ・フロンテクーペなど、軽自動車全体で見てもホビー感覚あふれる多彩なラインアップとなっていた。
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もちろんいまではクルマに対するさまざまな規制などが強化されているという環境の違いもあるが、VWタイプ2やステップバンのように、心の奥まで記憶に残る軽自動車が復刻版であってもいいので登場してもいいように筆者は考えている。
それこそ1990年代のホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ、オートサムAZ-1あたり以降はそれまで軽自動車に残っていた「ホビー感覚」を捨て、失われた30年間のなか「軽自動車=実用車」を歩まざるを得なくなってしまったのかもしれない。あえていうならば、スズキ・ジムニーがいまもなお残る唯一無二ともいえる存在感を放ちながらラインアップを続けているともいえよう。
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「軽自動車=セカンドカー」から、維持費の安さや性能向上もありいまやファーストカーとしてオンリーワンで軽自動車が使われるのが当たり前となってきているので仕方のないことなのかもしれないが、台数限定でもいいのでたまには遊び心溢れる軽自動車を出してもらいたいものである。