いいコンセプトではあるが課題も……
筆者は二輪車の運転免許を取得していないため、回転式アクセルグリップの操作に不慣れということもあるが、加減速、とくにアクセルグリップを戻して減速する際の微調整が非常に難しく感じた。事実上オンかオフかの二者択一。そのため最高速度を6km/hに設定した状態で運転すると、その数値よりも遥かに高い体感速度に肝を冷やすことになる。
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これが完全に平坦な路面でもそうなのだから、1cm刻みで重ねられ最大5cmの段差や傾斜が設けられたベニヤ板の上を6km/hで走行すると、とくに下り側は勢いも出るため恐怖感は非常に強い。また段差を乗り越えた際の衝撃がすさまじいため、思わず前傾姿勢を取って重心を下げバランスを取りつつ、アクセルグリップを戻して停止してしまいがちに。
なお、カーブを曲がる際は、一般的な乗り物と同様にスローイン・ファストアウトをしようとしても、前述の通りオンオフが激しい加減速特性のため事実上不可能。古典的なレーシングゲームのようにアクセル全開のままハンドルを切り、車両側の自動減速制御に任せたほうが、無理に自力でコントロールしようとするよりも滑らかに曲がれるのは間違いない。
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「e-SNEAKER」を含めたシニアカーは道路交通法上、「歩行者」かつ「身体障害者用の車いす」に区分され、最高速度は6km/hに制限されている。だが冷静に考えれば、人間の平均歩行速度は4km/h前後。その1.5倍もの速度で、狭く急斜面や大きな凹凸も多いを歩道を、歩行者と一緒に走るのは蛮勇にすぎるというもの。その後は大人しく設定速度を3km/hまで下げ、アクセル全開のままクルマ側の制御に任せて走り続けた。
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だが果たしてこれで、変化の激しい公道の歩道で、突発的な危険へ適切に対処し、安全に走れるのかというと、大きな疑問符が付く。開発陣にアクセルコントロールの難しさを指摘すると、「二輪車の運転経験がある人はすぐに慣れた」「慣れれば大丈夫」としきりに強調していたが、メインターゲットである高齢者、しかも二輪車の運転経験がない人にそれを求めるのは酷というもの。
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デザインや商品のコンセプトは時代背景を考えると非常に興味深く、応援したくなるのだが、まだまだブラッシュアップの余地がありそうにも感じた。走りに関しては乗り心地を含めて今後さらに洗練させ、真に高齢者に優しいパーソナルモビリティへ進化することを期待したい。