ABSやTCSが省かれたスパスタンEVマシン
3)オペル・モッカGSEラリー
日本国内では地味な印象のオペルですが、EU圏ではラリーの古豪として存在感を示しているようです。先ごろリリースされた電動コンパクトSUV「モッカ」をラリーカーに仕上げたモッカGSEラリーは、前述のeRally5レギュレーションに沿って開発された世界初のEVラリーカー。2026年から各地のラリーでその雄姿を観戦することができるとのこと。
ブラックとイエローをビビッドに塗りわけたコンセプトマシンは、最高出力207kW(280馬力)、最大トルク345N·mとされ、搭載バッテリーは54kWh。ラリーステージを力強く走破することが明言されています。
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もちろん、SUVパッケージとはいえ、マルチプレートLSD、レーシングギヤボックス、ビルシュタインのラリー用ダンパー、ピロボール付きサスペンションなど、チューンアップは枚挙に暇がありません。
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一方で、ABS、トラクションコントロールなどの電子制御アシストは競技車両らしく省かれたうえに、衝突などの急減速時には、センサーがコンマ数秒で高電圧システムを完全にシャットダウンするなど、最新のEVセーフティ機能も抜かりなく装備しています。
4)シュコダRE-X1クライゼル
シュコダは2000年にフォルクスワーゲンの完全子会社になっており、ラリーシーンではVWの後ろ盾をフル活用した活躍が目立ちます。無論、EVラリーカーでも同様で、内燃エンジン搭載マシンと互角、あるいはそれ以上の成績まで残しているのです。
ベースとなっているのはファビアというFFハッチバックで、ほとんどの歴代モデルがラリーに参戦してきたというサラブレッド。ここに、ラリーカー向けハイブリッドキットのサプライヤー、クライゼルがコラボレーションすることで実戦的なEVラリーカーが仕上がった次第。
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また、VWもクライゼルとともに移動式高速充電システム「CHIMERO」を開発。ステージ間のあらかじめ決められた場所に設置しており、15分でRE-X1クライゼルを80%まで充電可能(最大200kW)だと豪語しています。これまたラリー競技での大きなアドバンテージとなっていることは想像に難くありません。
なお、実際のラリーで14SS(合計160.44km)に加え、リエゾンを含めた1戦分の総走行距離は514.33kmだったものの、純粋に電動エネルギーのみでトラブルなく完走したとのこと。
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このように、EVラリーはまだまだ進化の途上とはいえ、往年の興奮が蘇ってくるのは時間の問題。EVだからといって、鼻であしらっているとエキサイティングなレースを見逃してしまいますね。