排気量の上限なし! 速けりゃなんでもアリ! 自動車メーカーがガチで怪物を投入しまくったレース「カンナム」が最高に面白かった (2/2ページ)

ここでもポルシェが大暴れ!

 革新といえば、シャパラルに劣ることのないビックリドッキリメカも登場しています。1970年のサーキットに現れたマックスイット・スペシャルはロータックス製2サイクルエンジンを4基搭載した4輪駆動レーサーという当時としては最先端。

 開発にはレジェンドレーサーの鮒子田寛さんが携わったものの、デフなしでシャフト折損とか、エンジンスターターが4つあるとか、とかくパイオニアゆえのトラブル多め。シャパラルの30秒遅れ、予選落ちなど活躍こそできなかったものの、これまたカンナムならではのマシンだったことは確かでしょう。

 ヨーロッパ勢に目を向けると、イギリスのローラやポルシェといったメイクスも参戦しています。とりわけポルシェはル・マンで優勝した917をカンナム向けにカスタムして参戦するなど、スポーツカー選手権から軸足をカンナムに移したかのような熱の入れよう。

 917といえば、希代のエンスーエンジニア、フェルディナンド・ピエヒが中心となったマシンですが、フラットシックスを2基縦につないだ12気筒ターボはもはや伝説的カンナムマシン。5.3リッターにKKKタービンを装着して1200馬力というのは実にカンナムらしいハイパワー。

 ちなみに、ピエヒはさらに4気筒を追加した16気筒6.5リッター空冷180度V16DOHCエンジンも開発したものの、実戦には投入しないままカンナムから撤退しています。このころからポルシェは勝ちすぎてレギュレーションの変更を招き、自らの首を締めちゃっていたのですね。

 このほかにも、レース界随一のミステリーマン、ドン・ニコルズ擁するAVSシャドウや、前述のローラT333CS、あるいはトヨタ(トヨタ7)や日産(R383)も800馬力を越えるマシンでカンナム参戦を目論むなど、ひところは世界を席巻していた観のあるカンナム。ですが、残念ながら1987年シーズンを最後に終幕を迎えてしまいました。

 小難しいこといわずに「速けりゃいい」「勝てば何でもあり」というレギュレーションのもと、繰り広げられたマシン開発やレースを再び望む声はいまだ根強いものがあるでしょう。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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