スーパーカーとは対極の存在のハズがドル箱に! スーパーカーメーカーが「アイデンティティ捨てずに」手がけたSUV6台 (2/2ページ)

ただのSUVでは終わらせない

 ランボルギーニもSUVの開発には積極的だった。2012年にまずコンセプトカーとして披露された「ウルス」は、「SSUV(スーパースポーツSUV)」と呼ばれ、実際に2018年に生産が開始されると、ランボルギーニの年間生産台数は一気に倍増。まさに歴史的なヒット作となったのである。

 最新モデルの「ウルスSE」は、PHEVのシステムを導入することで運動性能と環境性能を究極的なレベルで両立させた。参考までにその最高速は312km/h、一方でCO2排出量は140g/kmが達成されている。SUVのスタイルを採用していても、ランボルギーニが誇るエンジニアリングの先進性は一切変わるところはないのだ。

 アストンマーティンが2019年に発表した「DBX」も、じつに魅力的なSUVだ。そのフロントマスクを始め、クロスオーバースタイルともいえるエクステリアデザインは、誰の目にも一瞬でそれがアストンマーティンの作であると理解させてくれる、流麗でそして個性的なもの。高級感に富むキャビンのフィニッシュもまた、このDBXを語るうえでは見逃してはならないところである。

 搭載エンジンはメルセデスAMG製の4リッターV8ツインターボ。最高出力はスタンダードモデルでは550馬力とされるが、高性能版の「DBX707」には、その名のとおり707馬力にまでチューニングされた同エンジンが使用されている。DBXもまたその走りはスーパースポーツカーそのものだった。

 このように、スーパースポーツカーのブランドが数多くSUVの市場へと参入を果たすなかで、長らく沈黙を貫いていたのがフェラーリだ。いや沈黙を貫くというよりも、オフィシャルな場では「SUVは作らない」とさえ公言していたのだが、やはりカスタマーがフェラーリのSUVを求める声は大きかったのだろう。2022年にフェラーリは、「SUVではなく4ドアのスポーツカーである」として「プロサングエ」を発表するに至っている。

 715馬力の最高出力を発揮する6.5リッターのV型12気筒自然吸気エンジンを搭載し、その名が意味するところであるサラブレッド=純血種であることを主張するプロサングエ。その存在を否定する者などどこにもいなかったのは当然だ。

 これまでライトウエイトスポーツカーをプロダクトの主軸としてきたロータスも、2022年に「エレトレ」を発表したことでSUVの市場へと参入を果たしている。現在のロータスは中国の吉利汽車の傘下にあるが、エレトレはそのEV専用プラットフォームをベースに、ロータスが独自に開発したプラットフォームを使用するなど、独自のエンジニアリングが数多く展開されたフルエレクトリックのSUVだ。

 ボディはエアロダイナミクスを追求することで、Cd値で0.26を実現したきわめて高性能なもの。前後にエレクトリックモーターを搭載し、最高出力は高性能バージョンのエレトレRでは918馬力にも達する。

 スーパースポーツカー並みのパフォーマンスを誇るSUV。その世界はこれからますます面白くなりそうだ。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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