下手するとお宝を発見したあとのほうがずっと大変だ
●所有者との交渉がスムースにいくかはやらないとわからない
そして、いよいよここからが本題です。いくら放置されているとはいえ、勝手に運び出したら窃盗です。このクルマの所有者(本人がすでに他界している場合はその親族に)連絡を取り、譲ってもらえないかどうか交渉する必要があります。直接(あるいは電話や手紙などで)連絡がついた場合、処分に困っているか、本当は手放したいけれど想い入れがあって踏ん切りがつかないまま現在に至ってしまった……など、これまでの経緯に対してじっくり耳をかたむける必要があります。
「とにかく早く引き取ってくれ」という場合なら交渉はスムースです。しかし、想い入れがある場合、所有者を(表現としては好ましくありませんが)説得のうえ、納得してもらう必要があります。1度や2度の話し合いでは解決せず、年単位でじっくりと時間をかけて所有者の気持ちの変化を待つしかないケースも珍しくありません。ここで焦って話がこじれると、まず譲ってもらえなくなります。
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●無事に交渉が成立したあとは?
所有者との交渉がまとまれば、書面でお互いに契約書を交わし、金額を支払ってクルマを引き上げます。エンジンがかかる確率は極めて低い(不動だった期間を考えるとかけるべきではない)ので、数人で手わけしてキャリアカーまで手押しすることになります。すんなり動けばまだいいほうで、まずはクルマの周辺を片付け、移動できる状態にします。次に固着しているブレーキやサイドブレーキをどうにか動かせるようにして、慎重に移動させなくてはなりません。
そして、日本国内においては「書類の有無」が重要になってきます。この「書類がない」とは、「クルマを公道で走らせるために必要な自動車の登録に関する書類が存在しない状態」を意味します。具体的には「車検証」「抹消登録証明書」「譲渡証明書および委任状」です。「書類がない=法的には誰のクルマかわからない状態」となってしまうため、次のオーナーに引き継ぐことができません。場合によっては機械として復活できたとしても、公道走行が可能なクルマとしては認められない状態になってしまうのです。そうなると、泣く泣く部品取り車という運命を辿ることにもなります。
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●まとめ:バーンファインドはクルマ好きにとってひとつのロマン
日本国内だけでも納屋に眠っていたハコスカGT-R(KPGC10)やケンメリGT-R(KPGC110)、そしてフェアレディZ(S30系)、倉庫に眠っていたトヨタ2000GTなど、昭和の時代からタイムスリップしてきたクルマがいくつも存在します。そして、いま現在も眠り続けているクルマが数多くあるはずです(筆者もいくつか知っています)。2017年には岐阜県の納屋に眠っていたフェラーリ365GTB/4、通称「デイトナ」が発見されたあと、世界的にも有名なオークション「RMサザビーズ」に出品され、大きな話題となりました。
2017年には岐阜県の納屋に眠っていたフェラーリ365GTB/4、通称「デイトナ」画像はこちら
海外においても、ポルトガルのある倉庫からは200台以上のクラシックカーが発見されたり、イギリスの納屋では埃をかぶったランボルギーニ・ミウラが発見されたり、フランスではフェラーリ250GT SWB カリフォルニア・スパイダーが見つかっています。
ボロボロの状態からレストアされ、新車のような姿に復活を遂げたクルマもあれば、世界的に有名なオークションに出品されるほどの価値を見出されるクルマもあります(オリジナル度が高いことが証明され、現在の状態に価値があることを意味します)。また、個人レベルで引き取り、コツコツと修復していくケースももちろんあります。
世界的に有名な「RMサザビーズ」に出品されたフェラーリ365GTB/4、通称「デイトナ」画像はこちら
いずれにしても、「バーンファインド」によってこの世からその存在を抹消されていた古いクルマに日の目が当たるのは喜ばしいことではないかと、個人的には考えます。