いまのマクラーレンの成功はここから始まった! F1以来の純マクラーレン・スーパーカー「MP4-12C」 (2/2ページ)

エンジニアリングを結集したハイテクスーパーカー

 現在のマクラーレン車のすべてがそうであるように、軽量化は同社にとってもっとも重要な開発哲学であり、それはもちろんこのMP4-12Cでも変わるところはない。

 その象徴ともいえるのが、基本構造体として用いられたカーボンモノコック(カーボンモノセル)だ。ワンピース構造で成型されたその重量は、わずか80kg以下であり、その前後にはアルミニウム製のサブフレームが接合され、リヤのサブフレーム上にはパワートレイン一式が搭載される。

 搭載されたエンジンは「M838T」型と呼ばれる3.8リッタ―のV型8気筒DOHCツインターボで、これは同じイギリスのリカルド社との共同開発によるものだった。最高出力 & 最大トルクは2011年の発表時には600馬力 & 600Nmと発表されていたが、これは2012年にスパイダーがラインアップに追加されたのと同時に、最高出力のみ625馬力に強化されている。マクラーレンはそれに対応して、2012年以前までのMP4-12Cに対しては、同様の最高出力を得る無償のアップデート・プログラムを提供している。

 デュアルクラッチ式の7速SSG(シームレスシフトギアボックス)との組み合わせによって、0-100km/h加速を3.1秒で、そして最高速では330km/hを達成したMP4-12C。サスペンションに前後左右のダンパーを油圧で接続することでスタビライザーを廃したプロアクティブシャシーコントロールを採用し、またブレーキにはブレーキステア機構を採用するなど、シャシーでも斬新なメカニズムを多数採用したMP4-12Cは、F1ロードカー以来の純マクラーレンのスーパーカーということで、デビュー時から大きな話題を呼んだ。

 そのデザインは、もちろんエアロダイナミクスを徹底的に検証した機能美の極致ともいえるもの。リヤのアクティブウイングは、ブレーキング時にはエアブレーキとしての機能も果たす。また、特徴的な造形のヘッドライトをもつフロントマスクは、このMP4-12Cの大きな特徴となっている。

 MP4-12Cはその後、2014年には「650S」へと進化を果たし、このデザインは受け継がれることはなかったが、現在でもそれがもっとも魅力的なフロントビューだったと評価するファンは数多い。参考までに2012年に登場したスパイダーはリトラクタブルハードトップをもち、車重はクーペの1336kgから40kgほど増加していた。

 2014年までに生産されたMP4-12Cは約3500台。それがマクラーレンオートモーティブにとって、極めて大きな成功作となったことはいうまでもない。そしてその血統は、前で触れた650Sを経て、2017年には「720S」へとフルモデルチェンジ。現在ではそのアップデート版となる2023年発表の「750S」へと受け継がれている。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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