大幅に上質感を高めたインテリア
──インテリアからは、基本設計は踏襲しつつも質感をできるだけ上げよう、材料着色樹脂の加飾パネルを極力減らそうという狙いが感じられました。それは初代ユーザーからの要望があったのでしょうか?
鈴木さん:いや、初代のインパネ加飾はちょっとおもちゃっぽく感じられるので、新型では上質な方向性に振ろうという狙いですね。今回評判がいいのは、インパネやドアトリムに使っている、これも材料着色樹脂なんですが、本革やソフトパッドと思ってもらえているようなんですね。実車を見てどうでしたか?
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──質感は大きく上がっていますね。それも含めて、男性向けにシフトしているように感じました。逆にかわいさは薄れているので、女性からの受けという観点ではどうだろうかと……。
鈴木さん:初代のほうがかわいいかもしれないですね。
──企画開発の段階でクリニックを実施されていると思いますが、男女の声の違いはありましたか?
鈴木さん:男女の意見を比較したことはないと思いますが、上質感を高めようというコンセプトのなかで選ばれたのが、量産モデルのデザインになっています。
──開発スタッフのなかにも女性はいらっしゃると思いますが……。
鈴木さん:デザイナーに女性が多いですね。ですから女性が中心になって作っているという点で、男性の考えに偏るという心配はあまりしていません。
シート表皮のヘリンボーン柄ですが、一般的には縦に入れるところ、横方向に使おうとされたときは驚きました。これは室内を広く見せたいという、女性デザイナーの意図が込められています。
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──クルマのハードウェアは基本的に、初代のものを踏襲しているのでしょうか?
鈴木さん:はい。プラットフォームも一緒ですし、ホワイトボディも一緒です。フロントまわりは変えていますね。バックドアもデザインは一緒です。リヤまわりで変更したのはコンビランプとルーフスポイラー、バンパーですが、これだけ変えると全部変わったように思ってもらえるんですよね。
パッケージングに関しても、直すべき所はないと思ったので、まったく一緒です。シートは表皮だけ変更していますね。初代は後席に乗ったときの乗り心地が「ちょっとフワフワする」という評価だったのですが、シートの骨格自体を変えるほどではなかったので、表皮を少し硬めの味つけにして、乗り心地に貢献できるよう改善しています。
── 一方でパワートレインが刷新されました。
鈴木さん:はい。スイフトやソリオに使っているZ12Eにしました。「Z」の型式名には「これが最後の新開発エンジンになるかもしれない」という想いが込められています。
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──初代の1リッターターボ(K10C)を廃止したのはなぜでしょうか?
鈴木さん:ターボエンジンでよく走ってくれるという意見も多かったのですが、実際に販売台数を見ると、女性が3分の2を占めていてターボでなければダメという人はほとんどいないんですね。どちらかといえば燃費がいいことのほうがいまの時代に求められていますので。
──走りに関しては、乗り心地が明らかによくなっているのが、撮影会場内をゆっくり移動しただけでも感じられました。
鈴木さん:はい、プラットフォームは一緒ですが、減衰接着剤をたくさん使って剛性を上げているので、違いがわかるのだと思います。そのボディに合わせてサスペンションもチューニングしていますね。
──公道でその実力を試せる日が来るのを楽しみにしています。ありがとうございました!