建築基準法と都市計画法が突きつける現実
では、建築物とみなされた場合になにが起きるのか。まず建築確認申請が必要になる。大型バスの全長はおおむね12メートル、幅は2.5メートル、高さは3メートルを超える。床面積は約30平方メートル、準防火地域であれば内装制限や耐火性能の証明が求められるうえ、用途地域によってはそもそも「車両を改造した住宅」という用途が認められない。設計上、建築基準法の要件を満たすのは現実的に困難だと考えられる。
無確認で設置すれば違法建築物となり、是正命令や最悪の場合は行政代執行で撤去されるリスクが生まれる。給排水を引き込もうとすれば上下水道法に加えて消防法の規定も絡む。さらに電気工事士による屋外配線の申請が必須で、ここでも建築物か仮設物かで要件がわかれる。
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バスをいくら改造しても、本来建築物として設計されたものではないため、固定した時点で「違法建築」とされ、行政から是正措置を命じられる可能性が高い。法的に見れば、廃バスを住居とする発想は、「土地さえあればどこでも可能」というわけではなく、逆に通常の家を建てる以上に困難な条件を課せられる可能性がある。
廃バスは法的に“家”にはならない
バスを住宅化すると税金面でも新たな負担が生じる可能性がある。自動車税や重量税は登録抹消でゼロになるかわりに固定資産税の対象へ転換する可能性があるからだ。家屋認定の基準は屋根と壁で覆われ、人が継続的に利用できる状態にあるかどうかで判断され、評価額は原価方式で算定される。
また、建築確認を経ていない違法建築物では、住民票の登録を認められない場合が多い。さらに、廃バスが老朽化すれば外板や窓ガラスの破損が近隣への危険となり、景観上の問題を指摘されることもある。自治体によっては廃バスが「不法に廃棄された大型ごみ」と見なされ、撤去を求められることすらある。
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一方で、短期的な遊びや趣味の空間として利用する分には比較的自由度がある。キャンプ感覚で時折使うのであれば、車両のまま駐車する形にとどめ、恒久的に給排水や基礎を設けないことがポイントである。あくまで「クルマ」という扱いを維持しておけば、建築物として規制されるリスクは小さい。
近年ではキャンピングトレーラーやコンテナハウスを利用したグランピング施設が各地に見られるが、これらも設置方法や利用形態によって法的な整理がなされている。廃バスも同様の文脈で考えるべきだろう。
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結局、廃バスをそのまま住宅代わりにするのは、日本の法体系の下では相当に難しい選択である。ユニークな発想には違いないが、実際には建築確認や用途規制をかいくぐってまで恒久的に住居とするのはほぼ不可能である。現実的には、あくまで動産として扱われる形を維持するほうが賢明であろう。