ナンバーがないトラックの正体が判明
しかし、トラックどころか一般車の放置車両さえ見かけることはなかった。事前に放置車両がある場所を調べておいたのだが、そこは埠頭の最深部。もちろん一般車は進入禁止エリアだ。
とはいえ、放置車両までまったく近づけないわけではない。じつは大黒ふ頭には大黒海釣り公園なるものがあり、その駐車場までは一般道が走っている。この公園駐車場のそばに目的のブツがあるとしたら、その姿が見られるのではないかと企んではいたのだ。しかし、実際に見える範囲には放置車両もなく、台切りシャシー(トレーラー)も専用のスペースにきれいに並べられていた程度。
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すでに放置トラックは撤去されてしまったのだろうか。
話によると放置トラックの荷台には、さらに別のトラックが詰め込まれるという荒れ具合だと聞いていたのだが、その姿はどこにもない。これは完全なガセネタだったなと……諦めて帰る方向へクルマを走らせたときだった。最後にある交差点付近でクルマを降り、資料用の写真を撮ろうとしたときだった。目の前を走り去るトラックに何やら違和感を覚えたのだ。
大黒ふ頭を走るトラック画像はこちら
そしてまた同じようなトラックが横を通過していく。
「あっ、ナンバープレートがないぞ!?」
そう、さっそうと走り抜けるトラックには本来あるべきナンバープレートが前後ともになかったのだ。
さらにびっくりしたのはその荷台部分だ。普通ならしっかりと閉じている架装部分が開いたままになっており、そこからは別のトラックのキャビンが覗いていた。その姿はまさしく事前に情報があった放置トラックそのものじゃないか。
3台ほど、ナンバーなしで荷台にはトラックという車両が通過したが、それ以降はまた普通のトラックしか通らなくなった。そこで、少しだけ移動して一般車進入禁止エリアの奥を覗いてみた。するとそこには、先ほど目の前を走っていったナンバーなしのトラックが路肩の数台停まっている姿を見つけることができた。
大黒ふ頭に放置されたトラック画像はこちら
遠目にしか見ることはできないが、いずれも大型のウイング車で荷台は不自然な形でもち上がっている。「これが放置トラックだ!」と思った瞬間、あらたなナンバーなしのトラックが通過していった。
なぜナンバーがないのに公道を走っているのか? どうして放置車両のようなトラックが何台もあるのか?
その答えはこうだ。
港湾道路は基本的には関係車両(港湾関係の荷役等に関わる車両)以外は進入禁止になっているのだが、道路交通法が適用されない特殊な道路でもある。そして筆者がナンバーなしトラックの走行を見かけたのは、港湾道路と一般道が隣接する交差点だったのだ。つまり、一見放置車両にも見えたナンバーなしトラックが堂々と走っていたのは港湾道路ということだったのだ。
大黒ふ頭のイメージ画像はこちら
さらに、大黒ふ頭には大型トラックの放置車両がたくさん停まっているという話はどこから来たのかも理解できた。
放置車両として認識されたトラックの正体は、筆者が先ほど見たトラックONトラックのことで、これは輸出のために仮置きしているものだった。これは通称「親子積み」と呼ばれる方法で、1台分のコストで2台、または3台分(大型ウイング車に小型トラックを1台か2台積載する)を船に詰めるという賢い方法なのだ。
たしかにウイング部分が大きくもち上がった状態で、なおかつ内部には別のトラックが積んであるという姿を知らない人が見れば、放置車両と見間違えても当然だろう。それほど親子積みのルックスにはインパクトがある。
これが大黒ふ頭の放置トラックの正体だったわけだが、ほかの情報によると埠頭の奥に行けば親子積みしたまま放置されたトラックもあるとかないとか。その真実は港湾関係者ではないと知ることができないのだが、少なくともトラックの放置車両があちこちに捨てられているという事実はなかった。
今回はネットに出まわる情報をもとに実際の現場に行ってみたら、思いがけない事実に出会うというサプライズだったということだ。