指すものは異なるが混同されている用語も
●「ギヤ」と「シフト」
これは本来まったく違うモノやコトを意味する言葉だが、けっこう混同されて使われており、もはや本来の意味をうんぬんするのも無意味なレベルになりつつある。ギヤ(gear)は文字どおり「エンジンの回転力を伝える装置」であり、シフト(shift)は「ギヤを切り替える動作や装置」のこと。そのため「ギヤチェンジ」といういい方は正しいが、「シフトチェンジ」だと、「頭痛が痛い」的にちょっとおかしなことになる。
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とはいえ、いまやクルマ関係の文脈のなかで「シフトチェンジ」という言葉が使われたとしても、めくじらを立てるべきではないと考える。誤用も、何十年か使われつづければ「普通の日本語」として定着するものだからだ。
●「シャシー」と「プラットフォーム」
これはどちらも同じく「クルマの基本構成部分」を指す言葉だが、微妙に意味合いが違うというか、時代の変化に伴って「プラットフォーム」という言葉が主に使われるようになった形だ。
昔のクルマはフレームの上にボディが乗っかる構造を採用しており、そのうちのボディを除いた土台(骨格)部分をシャシーと呼んでいた。というかいまでも、ボディ・オン・フレーム構造のクルマにおいてはそう呼ばれている。
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しかしその後、ほとんどの乗用車においてボディ全体がフレームを兼ねる「モノコック構造」が採用されるようになったため、モノコック車のフロア部分だけを「シャシー(骨格)」と呼ぶのは、意味合いとしてちょっと違うということになった。そのため、それまでの「シャシー」にかわる呼び方として、モノコック車のボディのうちフロア部分は「プラットフォーム」と呼ばれるようになったのだ。
●「サスペンション」「ダンパー(ショックアブソーバ)」「バネ(スプリング)」
これらは同じモノを指している言葉ではなく、それぞれ違うものを意味する言葉。そして、じつはけっこう間違えて覚えてしまっている人も多い言葉だ。
まず、「サスペンション」は車輪を支え衝撃を吸収する機構全体のこと。個別の部品としては、サスペンションアームとバネ(スプリング)、そしてダンパー(ショックアブソーバ)から構成されている。ブッシュ(足まわりとボディの接点などに仕込まれているゴム製の緩衝材)もサスペンションの一部とする考え方もあるだろう。
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ちなみに世のなかの人々を見ていると、「サス(サスペンション)=バネ」という間違った覚え方をしている人も多いように思う。
そして、「ダンパー(ショックアブソーバー)」は、文字どおりショックをアブソーブ(吸収)し、バネの余計な動きをダンプさせる(減衰させる)ための棒状の部品。で、バネ(スプリング)は、これまた文字どおり「バネ」部分のことだ。コイル状である場合が多いが、複数枚の鋼板を重ね合わせた「板バネ(リーフスプリング)」を採用している車種もある。