トンネル内の照明は時代とともに進化していった
カウンタービーム方式とは反対に、走行車両と同方向に光を照射するプロビーム照明方式と呼ばれるものがある。先行車両の背後に光が当たるため、トンネル内での先行車の存在がよく確認できる照明だ。前車の詳細がよく見えるこの方式は、多くの車両が連なって走る交通量の多いトンネルで採用される照明方式だ。
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一方、照明灯の色はどうだろうか。現在は、白色光が一般的だが、少し前の時代に作られたトンネルではオレンジ色の照明灯を目にする場合がある。このオレンジ色の照明灯はナトリウム灯と呼ばれ、1960年代から普及した照明灯である。消費電力が少なく寿命が長いことから採用された照明灯だが、トンネル内が汚れた排気ガス(当時、排出ガス規制はなく燃焼ガスは制約なしで排出されていた)で充満している状態で、照明効果(光の透過効果)が白色灯より優れるためオレンジ色のナトリウム灯が採用されたという。
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発光管にナトリウム蒸気を封入したナトリウム灯は、オレンジ色の発色となるため照明による視認性に優れ、高速道路を主体とする照明灯として採用されたものだ。長寿命性も大きな特徴だったが、さらに当初の低圧ナトリウム灯から3倍ほど寿命が延びた高圧ナトリウム灯に切り替えられていった。
しかし、排出ガス規制が進みトンネル内の空気汚染がかなり低減化されると、照明光がオレンジ色である必要はなくなり、むしろ自然光に近い白色光の照明灯のほうがよりよいと考えられるようになり、白色灯に切り替えられるようになっていった。これには演色性(照明灯の光源色により照らされた物の色が異なって見える事象)の問題も手伝って、Hf(高周波)蛍光灯への移行が進むことになった。その後、蛍光管の進化は進み、セラミックメタルハライドに切り替わることで長寿命性、省電力化が大きく引き上げられている。
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そして、発光体を蛍光管からLEDに切り替えることで、さらに長寿命性、省電力化は大きく向上し、高出力化も可能になったことから現在はこの方式が使われている。ちなみに、LED灯の寿命は、当初の低圧ナトリウム灯と比べて10倍程度に延びたとされている。照明灯の進化により、トンネル内や高速道路の夜間走行時に、視認性やそれに伴う疲労の軽減が大きく引き上げられたことになる。
日常、何気なく走っているトンネルや夜間の高速道路だが、思い出したら照明灯の色や光の当たり方に注意してみるのはどうだろうか。意外と細かな点が気になってくるかもしれない。