ワイルドな姿がウケたメルセデス・ベンツ560 SEC 6.0 AMG
しかしながら、1990年代を迎えるころにAMGは再び変貌を遂げるのでした。このごろは、スペシャルカーが大流行りで、AMGといえどもライバルの追随を無視することができなかったのです。実際、ロリンザーやブラバス、ガルウイングドアで有名なスタイリングガレージといったファクトリーもこのころに台頭し、市場の話題をかっさらっていましたからね。
そこでAMGが1985年に作り上げたのが560 SECをベースに、エンジンを6リッター(5956cc)に拡大し、ブリスターフェンダーを装備したAMG 560 SEC 6.0ワイドバージョン。これ以前にも、560 SECのフェーズ1的なモデルはあったのですが、こちらはメルセデス・ベンツのM117をボアアップした6リッターモデル。ワイドバージョンではM117のブロックを使いながら、往年の380 SEL同様に4バルブ化を遂げているのです。
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もちろん、本家メルセデス・ベンツもM117の後継エンジン、M119で4バルブDOHC化を遂げていますが、それはようやく1989年になってから。4年も先駆けているところがAMGらしいというか、じつにカッコいいポイントではないでしょうか。ノーマルM117が最高出力300馬力程度に比べ、AMGの6.0は370〜380馬力を絞り出していたとのこと。砂型鋳造のアルミシリンダーという昔ながらの製法ながら、十分以上の効果を発揮しているのです。
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そして、ブリスターフェンダーいっぱいに拡幅されたタイヤ&ホイール、ビルシュタインの強化サス、さらにはセブリング製マフラーといった要素を詰め込み、並み居るライバル達を一気に引き離したのでした。また、インテリアに関してAMGはさほどスペシャルな仕事を残していませんが、この個体を見ればわかるとおり「お金出してくれたら外注でスゴイのつくりまっせ」という姿勢です。
とかく6.0ワイドバージョンはオーダーメイド的な個体が多く、こちらはベルギーのスペシャルカーファクトリー「キャラット・ドゥシャトレ」によるリッチ&ゴージャス。レザーはすべてベルジャンバッファロー(北米のバッファローとは別種)に置き換えられたほか、メープルウッドは使用面積を拡大し、これでもかとバブリーな雰囲気を醸し出しているのです。
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驚くべきことに最初のオーナーはAMGジャパン(ヤナセ)にオーダーをいれた日本人なんだとか。ちなみに、マラカイトグリーンのボディカラーもオリジナルのままだそう。この当時の標準的な新車価格は2950万円と、ノーマルSECの2倍程度。ですが、電動&レザーのレカロシート(ペアで140万円)やインテリアのアップグレードは含まれていないので、キャラットの付加価値を考えれば乗り出し4000万は楽に越えたのではないでしょうか。
ともあれ、現行のAMGもいいクルマですが、6.0ワイドバージョンは懐かしいだけでは済まない、ワイルドで自由奔放だったころのAMGを思い出させてくれる恰好の存在です。