この記事をまとめると
■スウェード素材のステアリングは高いグリップ性能でスポーツ走行に最適
■本革に代わり東レ開発の人工皮革ウルトラスウェードが主流に
■高級感と機能性を兼ね備えるが手入れの手間がかかる点は注意が必要
スポーツカーに多いスウェード巻ステアリング
ステアリングのグリップの素材はウレタンやスムースレザーが主流だが、世界のプレミアムスポーツカーやレーシングカーではスウェード素材のステアリングが装着されていることがある。
スウェード素材のステアリングは本革と人工皮革のものがあり、身近なところでは、スバルのSTIがウルトラスウェード素材を使用した、グリップ性能に優れたステアリングを用意していたりする。
本革のスウェード素材ばかりだったのは過去の話で、いまではウルトラスウェードやアルカンターラと呼ばれる、おもに東レが独自開発した人工皮革素材が用いられていることが多い。レクサスLSの2017年モデルの例ではルーフやサンバイザー、グレードによってはシートにもウルトラスウェードを採用している。
ウルトラスウェードを採用したレクサスLSのインテリア画像はこちら
本革スウェード、ウルトラスウェードをステアリングに使うのは、ただ高級感を演出するためだけではない。STIのコンプリートカーにも採用されているぐらいで、グリップ性能が高く、素手でもドライビンググローブ着用時でも安定したステアリンググリップが得られるため、スポーツドライビングの世界で重宝されているというわけだ。
ただ、ウレタンやスムースレザーの本革ステアリングに比べ、手入れが大変というデメリットがある。それは靴も同じようなものといっていい。使い続けているうちに表面が擦れ、手垢の付着などによってせっかくの毛羽立ち=滑りにくさが失われ、ツルっとしたタッチになってしまうこともありがちだ。
劣化したスウェード巻ステアリング画像はこちら
ウルトラスウェードを採用するトヨタ車の取扱説明書には、汚れの手入れとしては、布などに40 ℃程度のぬるま湯をしみ込ませて固く絞って拭き、毛羽が強く乱れないようにきれいな布で拭き取り、乾いたら柔らかいブラシで毛並みを整える……という手順を踏むと記載がある。
また、黒などの濃色スウェードについたほこりなどの表面上の汚れは、ブラッシングと衣類用の粘着テープで取り除くとある。
やってはいけないとされる手入れ方法のひとつは、靴やバッグ用のスウェード汚れ落とし剤を使うこと。もともと本革のスウェード用であることと、滑りにくさを考慮していないからである。
ステアリングの汚れを落とす際、ウレタンのように水で絞ったタオルで拭き上げるだけ、スムースレザーのように専用レザーケアアイテムを使って汚れを落とし、本革に劣化防止の潤いを与えるだけという簡単手入れと違って、本革スウェード、ウルトラスウェードの手入れ、とくに汚れの目立ちやすい色の手入れは結構大変。
目立つ色のスウェード巻ステアリング画像はこちら
それでも、スポーツカーだけでなく高級車にも似合う上質感があり、ウルトラスウェードならばホンモノの本革スウェードに近い見た目とザラリとした触り心地が得られる機能性がある。ウルトラスウェードなら撥水性があり、水気や汚れが浸透しにくいから、本革のスウェードよりも手入れが楽というメリットも忘れてはならない。
アフターマーケットパーツでは本革スウェードのものも含め3~5万円ぐらいで販売されているが、今どきのステアリングはステアリング操作だけでなく、各種操作を行うスイッチ類が付随しているから、スポーツ走行専用にクルマを使う場合は除き、ステアリング交換は現実的ではないのも確かだろう。