LAの街を走る路線バスはいまだ内燃機関が多い
日本だと新規にBEVバス導入となるのだろうが、導入済みのBEVスクールバスを活用することで財政面でもスマートなオリンピック開催をめざしているのがよく伝わるし、そもそもオリンピックのために新たに大量に新規製造したBEVバスを導入するというのは、SDGsの観点からもいかがなものかと声が出そうなほど、自然エネルギー発電でほぼ電力供給を賄うほど、その方面では意識の高いカリフォルニアらしい取り組みといえるだろう。
とはいうものの、街を走る路線バスのほとんどはいまだにCNG(圧縮天然ガス)を燃料とするICE(内燃機関)バスばかり。一部報道ではLAメトロでの路線バスのBEV化率はわずか3.5%とのこと。当初2030年には100%BEV化ということで進めていたのを5年延長し、2035年には100%達成を目指しているとの別の報道もあるが、いまのペースではそれも難しいのではないかとの話も出ているようである。筆者は2025年9月下旬から2週間ほど南カリフォルニアに滞在したのだが、ついにBEV路線バスを見かけることはできなかった。
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地元の報道を見ていると、BEV路線バス普及について別の不安があるようだ。それが“トランプ政権”である。トランプ大統領はBEV普及について否定的な考えを示していることはいまさら述べなくても有名な話。すでに全米各地の連邦政府庁舎内にある充電器の撤去を進めたり、2025年9月末で対象のBEVを購入すると受けられる最大7500ドル(約112万円)の所得税控除も終了となっている。LAメトロもBEV路線バスの整備に対し連邦運輸局から助成金を受けながら整備を進めているようだが、今後連邦政府の助成が受けられなくなる可能性も十分あり、路線バスのBEV化もとん挫する可能性が高い。
カリフォルニア州は2035年までにICE新車の販売を禁止するという姿勢を変えていない。一般市民に対し「新車はBEV以外買ってはいけない」といっておきながら、路線バスのはいつまでもCNG車のままでいいというのはどうみてもアンフェアである。
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アメリカと日本で大きく異なるのは、とくに南カリフォルニアでは多くの一般市民が基本的に公共交通機関を利用しない(マイカー移動メインであるし、治安が悪くいつくるのかわからないなど使い勝手が悪いため)というので一般市民からも現状が見えていない(路線バスのBEV化が進んでいない)ことはあるが、気がつけば「なんで路線バスはいいんだ」ということにもなりかねない。
アメリカはトランプ政権という存在があり、次期大統領選挙で民主党へ政権交代が起きれば、再びBEVの普及が加速するかもしれないということで、“先行きがはっきりしない”なか問題が複雑化しているように見える。