タイヤもシートもハンドルもガラスもトランスミッションも別の会社が作ってる! だったら何をもって「自動車メーカー」っていうの? (2/2ページ)

ボディを製造してこそが自動車メーカー

 一方、エンジンに欠かせないトランスミッションについては事情が異なる。マツダやスバルのように自社に製造ラインを有している自動車メーカーもあれば、トランスミッション専業メーカー(日本で知られているのはアイシンやジヤトコ)から購入しているケースもある。比率でいうと後者のほうが主流といえるだろう。

 さらに、シートやスイッチ類、細かいネジやナットなど、自動車を構成する万単位のパーツの多くは、自動車メーカー以外が製造している。

「自動車メーカーは大企業なのだから作れない部品はない!」と考えたくなるが、じつはほとんどの部品については、他社が製造したものを調達して、自動車メーカーが組み立てている。まさに、自動車産業は水平分業なのである。

 ただし、ここでポイントになるのは、ボディ(プラットフォーム)の製造を外注しているケースはほとんどないということだ。ドアハンドルや樹脂製フードなどを調達していることはあっても、フロアパネルなどの大物は自動車メーカー自身がプレス・成型・溶接・塗装といった工程を行っている。つまり、ボディにこそ自動車メーカーの設計思想が詰まっており、差別化の源泉になっている。

 “メガサプライヤー”と呼ばれる部品製造の大手企業のなかには、インバーター、トランスミッション、モーター、バッテリーパック、サスペンション……とBEVを構成するパーツのほとんどをカバーしている会社もある。しかし、このように自動車にかかわるほとんどの部品を作っていても自動車メーカーとは呼ばれない。

 ボディを作り、そこに注文したパーツを設計どおりに組み立てるということが自動車メーカーの役割であり、だからこそ“完成車メーカー”と呼ばれるのだ。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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