魅力的な「企画切符」でバスは存続できる! 収益性の厳しい路線バスの活路 (2/2ページ)

電子決済の強みとは

 今回は期間限定であり、実験的な意味合いの強い企画と考えられる。

 この券の販売・利用実績を見て、将来はさらに充実した魅力ある企画切符が発行されるのであろう。バス事業は交通インフラという重要な位置づけにありながら、収益性は決して高くないというジレンマがある。最新の技術を駆使して魅力的な企画切符を発行すれば、安定的に利用者の増加につながるのではないだろうか。

 同時期には相鉄グループが、同社の鉄道・バス全線を対象とした1日乗車券を、同様のシステムを使って発行した。こちらは2025年8月1日~9月7日までの期間限定で、単純な1日乗車券ではあるが今後の展開が期待される。電子決済はプログラムを組むだけで適用範囲を自由に決められるから、ほかの鉄道・バスだけではなく、デパート・スーパー・娯楽施設などとの提携も可能なのだ。

 昭和に活躍したSF作家でショートショートの第一人者であった「星 新一」が、「ひとにぎりの未来」という単行本のなかに、「番号をどうぞ」という作品を残している。

 湖に落ちた主人公が財布やカードをすべてなくし、びしょぬれの状態で街にたどり着く。そこで助けを求めるのだが、どこに行ってもクレジットカード番号・銀行口座番号・免許証番号などを尋ねられて答えられず、助けてもらうことができない。結局罪を犯すことで警察に身分を特定してもらい、元の便利な生活に戻れたという話だ。

 電子決済は極めて利便性が高くて発展性のあるシステムだが、紙の切符の暖かさも少しは残しておいた方がよさそうである。


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