クルマの「オールペン」は新車時の塗装には敵わないってホント? メーカーが塗る塗装との違いとは

この記事をまとめると

■全塗装・オールペンは塗料よりも乾燥工程と下地処理が品質を左右する

■新車塗装では補修用と塗料が異なるほか高温焼き付けでの仕上がりとなっている

■完璧な下地と熟練の技術があれば全塗装でも新車同等の美しさを再現できるといえる

オールペンは新車塗装には敵わない?

 クルマを丸ごと塗装しなおす作業のことを全塗装やオールペイントといい、後者を略してオールペンと呼んだりする。

 愛車のボディを好みの色に塗り替えたい、あるいは経年劣化で退色してきたボディを思い切ってオールペンでリフレッシュしたいと考えたことがある人もいるだろうが、あと塗りのオールペンでは新車の純正塗装レベルを再現できないともいわれている。

 では、純正塗装と後塗り塗装のオールペンの違いはどこにあるのか? まずは塗料の違い。

 新車の塗装は、熱硬化性樹脂塗料。それに対してボディショップや板金塗装屋が使う補修用の塗料は、化学反応によって樹脂が硬化する二液性樹脂塗料(新車では、環境に優しい低揮発性塗料=水性塗料の使用も増えつつある)。

 塗料自体も大きく違うかもしれないが、実際のところ、より大きな違いは乾燥・硬化までの時間で、完全に乾燥してしまえば塗膜性能に大差はなく、むしろ補修用の二液性樹脂塗料のほうが耐久性、艶感においては優れているとさえいわれている。新車用の熱硬化性樹脂塗料は140~150℃の高温で約30分焼き付ければ乾燥するので生産性がいいが、補修用の場合すでに電子部品や樹脂パーツなどがボディに取り付けられているので、高温で焼き付けるのは不可能……。

 だとすれば、どこで新車用と補修用で差がつくかというと、下地と工程ということになる。新車のボディは汚れもなければ傷もない。当然錆びもないので、塗装面の平滑度がパーフェクト。

 一方、あと塗りのオールペンでは、もとの塗装の上に重ね塗りをすることが前提となる。それをどこまで剥離させてから塗るかで仕上げは大きく変わってくるし、傷やヘコミやの凹凸は塗装のムラを作る原因となる。錆ももちろん大敵だが、こうした下地処理をどこまでやるかが塗装の良否を左右する。

 また、塗装時にどこまで外せる部品を外して塗るかも影響するが、ホワイトボディの状態で塗装できる新車の塗装にはかなわない。

 最後は均一性。新車はロボットが塗装するので均一性は保証されているが、オールペンは職人の腕次第。日ごろ縁もゆかりもない板金塗装屋さんのなかから、腕のいい職人さんに巡り合うのは運次第の部分もあるわけで……。

 ただし、下地と工程の手を抜かずに一流の職人の手で塗装されれば、オールペンだって新車に劣らないほどの仕上げは十分に可能。塗装は下地と工程で決まると覚えておこう。


この記事の画像ギャラリー

藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
趣味
-
好きな有名人
-

新着情報