この記事をまとめると
■交通事故直後は興奮状態で痛みを感じにくく時間が経って症状が出ることが多い
■アドレナリンやβ-エンドルフィンの鎮痛作用で痛みが一時的に抑えられることが要因
■遅発性のむちうちなどを見逃さぬよう早期の整形外科受診が重要となる
直後は痛くないからといって油断してはいけない
中高年になると、激しい運動を行ったあとの筋肉痛が、翌日ではなく2日後、3日後に出てくるなどといわれているが、交通事故に遭ったときも、外傷がなければ当日は痛みや違和感がなく、駆けつけた警察官などから「ケガはないですか?」と聞かれてとっさに「大丈夫です!」と答えてしまうのはよくあること。
にもかかわらず、翌日以降になって、首の痛みや、頭痛・めまい、手足のしびれといった症状が出てくることは珍しくない。なぜ交通事故のダメージは、時間が経たないと自覚することができないのか? その理由は主にふたつある。
ひとつめは、事故直後は誰もが気が高ぶっていて、精神的な高揚によって一時的に痛みが抑えられてしまうため。ひと晩経って興奮や緊張が収まってくると、痛みを感じるようになる。
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もうひとつは、ホルモンの作用。事故に遭遇して身体に大きな衝撃が加わったとき、脳は危機的状況にあると判断し、脳内麻薬といわれるアドレナリンやβ-エンドルフィンといったホルモンが大量に分泌されるようになる。これらのホルモンは鎮痛作用があるので事故直後は大した痛みを感じないが、時間が経過し緊張が解けると、痛みが現れてくるわけだ。
また、交通事故の代表的な症状であるむちうち(頚椎捻挫)は、事故直後ではなく、数時間から数日後に痛みが現れる遅発性の痛みが特徴。患部が腫れる炎症反応も、事故後の数時間から翌日にかけて徐々に起きてくるので、実感するまでタイムラグが生じやすい。
こうしたことがあるので、交通事故に遭った場合は、痛みがなくても整形外科を受診することが大切。とくに、あとから痛みが出てきたら、すぐに医療機関で診察を受け、警察の実況見分(現場検証)で「物損事故」として届け出ていた場合は、病院で発行してもらった診断書を警察署に持参し人身事故に切り替えてもらう手続きをしておこう。相手の保険会社にも、「痛みが出てきたので病院を受診する」と一報を入れておくのを忘れずに。
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遅れて現れる痛みは、放置しておくと慢性的な痛みや後遺症に悩まされる可能性もあるので、痛みや不調を感じたら、なるべく早急に病院を受診するようにしょう。なお、損害賠償請求や後遺障害等級認定などに必要な診断書は医師でなければ発行できないので、事故後に最初に受診するのは必ず病院(整形外科)にすること。