公道はもちろんサーキットでも走行は認めないって実質オブジェ!? それでも1億8千万円で落札されたフェラーリの開発車両とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ラ フェラーリの開発中に製作された実験開発車両が「F150 M4」だ

■コレクターの手に渡る際には公道やサーキット走行も認めないことをフェラーリは要求した

■2度と手に入らないかもしれない特別な実験車両は約1億7882万円で落札された

通常ではお目にかかることもできない試作車という代物

 2025年の夏にメジャー・オークショネアのRMサザビーズがカリフォルニアで開催したモントレー・オークションに、フェラーリの「ミュールカー」が出品された。ちなみにミュールカーとは、自動車メーカーがニューモデルの開発段階初期で製作するプロトタイプのことで、多くの場合は既存のボディやシャシーを使用して、それに新開発されたパワーユニットを搭載。パフォーマンスや耐久性の確認などを目的に、さまざまな走行テストにそれは使用される。

 もちろんこのミュール・カーそのものにはそれ以外の役割はないので、テストのスケジュールが終了すれば、通常はメーカーによって保管されるか、あるいは廃棄されるケースがほとんど。だがそれさえもがコレクターの手へと渡ってしまうのが、いかにもフェラーリの世界である。

 今回、モントレーオークションに姿を現したフェラーリのミュールカーは、「F150 M4」と呼ばれるもので、これは2010年前後にプロジェクトがスタートしたとされる、あの「ラ フェラーリ」の開発途中に製作されたものだ。

 実際にラ フェラーリが発表されるのは2013年のことで、それが「288GTO」、「F40」、「F50」、「エンツォ」に続くスペチアーレ(特別なカスタマーのみが購入可能な、限定生産を前提としたスペシャルモデル)であることは、フェラーリのヒストリーに詳しい人には周知のとおり。そのパワーユニットに、F1マシン由来のハイブリッドシステムである「HY-KERS」を採用したことも大きな話題だった。

 ミッドに搭載されたエンジンは6262ccのV型12気筒DOHC自然吸気で、これ自身で800馬力の最高出力を発揮。さらに、エレクトリックモーターによって163馬力をサポートすることで、システム全体では963馬力の最高出力を誇ったというのが、そのパワーユニットの概要だ。

 F150 M4は、2011年頃に製作されたミュールカーとされるが、F150とはラ フェラーリのプロジェクトネームであり、またそれに続くM4というコードからは、それが開発時において4番目に製作されたミュールカーであることが容易に想像できる。

 ベースとなっているのは当時生産されていたV型8気筒ミッドシップの「458イタリア」だが、アルミニウム製の「F142」型プラットフォームはこのF150 M4のために改造されている。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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