WRCの頃からスバルのモータースポーツ最前線を走ってきた名機がついにラストラン! 「ありがとうEJ20」とドライバーもファンもエンジン1機に感謝の大声援 (2/2ページ)

最後のレースに相応しい大活躍

 迎えた決勝では、井口がスタートドライバーをつとめ、練習走行や予選で見せた快調をそのまま見せつけ、スタートからライバルをどんどん引き離していきます。

 最近のスーパーGTでは、レース途中のクラッシュやトラブルが発生した際にルール上、ピットに入れないことも多くあるため、ドライバー交代ができるミニマム周回でピットに入り後半に繋ぐことも多いのですが、今回は27周目というレースの約半分まで井口選手がドライブを担当しました。

 その後、山内選手はタイヤ交換と給油を済ませて、実質3位でコースに復帰します。ここでライバルがタイヤ無交換作戦を実施し10秒ほど先行していきます。チームとしてはライバルのタイヤがタレてきて終盤に逆転できるだろうと判断していましたが、意外にもライバルも好調な走りを見せ続け、なかなかタイムが縮みません。後続のライバルに接近される場面もありましたが、山内は冷静な走りで2位をキープ。そのままフィニッシュとなりました。

 レースを終えてピットに戻ってきた山内からは悔し涙が溢れ、「優勝で戻ってこられなくてゴメン」とこぼしていました。そんな山内を井口はしっかり支え労いをかけていました。

 終了後に行われた表彰式とグランドフィナーレでは、笑顔でファンの声援に応えていましたし、レース終了後ドライバーがピットに戻ってくるのを待っていたファンとともに記念撮影を行うなど、最後までスバルファンに対して感謝を伝えていました。

 そんなレースを振り返って井口は「今回はマシンもエンジンもタイヤもすごく調子が良くて、決勝レースも気持ちよく走ることができました。後半の山内選手のときは路面の変化や気温も変わったことで少し苦しい展開もありましたが、山内選手が2位を守ってくれて良かったです。本当はもう少し自分のスティントでギャップを作りたかったのですが、タイヤもキツくなってきたところもあり、そこが少し悔いがある部分です。それでも安定して逃げられたのはよかったと思います」

 続けて、「EJ20エンジンラストレースということで優勝をもちろん狙っていました。練習走行、予選とトップを取れましたが、決勝で2位になってしまいました。それでも表彰台に乗れたことは嬉しいです。チームもエンジニアもメカニックもとても頑張ってくれたことに感謝します」

 最後に、「長年EJ20エンジンに乗ってきて、BRZで初めて優勝したのも、チャンピオンを獲ったのもEJ20でしたので、自分にとって人生を変えてもらったエンジンだと思います。独特の音が印象的ですし、年々パワーアップしてきて高いパフォーマンスを見せてくれました。多くのトラブルが出たこともありますが、最終レースで表彰台にあがれたことは、エンジンチームの頑張りが報われたのかなと思います。来シーズンは新しいエンジンになります。まだなにも言えませんが期待できると思います……というか、期待しかないです」と語ってくれました。

 決勝で悔し涙を流した山内選手は「レース後半は路面の変化なのか手応えが薄くなっていきあまり良い状態では無かったです。そこはライバル勢が後ろから追い上げてきたきましたが、守ることができてよかったです。EJ20エンジンラストレースでしたが、そういった苦しい状態でもエンジンに助けられた場面もありました。GT500マシンとの絡みでギャップを作れた場面もあって展開が良かったところもありました」

 さらに続けて、「以前から新しいエンジンという構想があり、今年ラストレースということになって、1戦1戦レースを噛み締めながら走ってきましたが、やはりシーズン後半になって想いがすごく強くなってきたところがあります。エンジン部門のみんなと『勝てるように頑張りたい』と話してきたところもあったので、最後の勝てるレースで勝てなかったのは悔しいですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と語ってくれました。

 小澤総監督は「結果的に2位というポジションになってしまいましたが、今回のレースはマシン、セットアップ、タイヤとすべてがよい組み合わせになって、完璧なレースができたと思います。思いのほかタイヤ無交換で走ったライバルが速く、タイヤがタレてきた後半勝負になると思っていたのですが、ライバルのタイヤがタレてこなくて逃げられてしまったのは想定外でした。しかし、いま持てるパフォーマンスはすべて出し切れたのではないかと思います。今シーズンはトラブルがいっぱい出てしまい、今日も不安もありましたが最後まで良い走りをしてくれました」

 小澤総監督は最後に、「EJ20エンジンは自分にとってはWRC時代から携わってきたエンジンでした。30年以上前に設計されたEJ20エンジンっていいエンジンだったなと思いますし、最初に作った方々の苦労はすごかったのだろうと思います。そんなエンジンを越えられるように、次のエンジンもさらによくしていきたいです」と振り返りました。

 2025年シーズンのスーパーGT、スバル/STI、R&Dスポーツの戦いは終了し、ドライバーランキング、チームランキングともに9位という結果になりました。

 2026年シーズンは既報のレポートのとおり、すでに走行テストを行っている模様です。そんな新エンジンとともに、どのような戦いを行っていくのか期待していきたいです。


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