労働者を守るための労働時間の規制が逆に「働くクルマのドライバー」を苦しめることになる! 高市政権に求められる規制への柔軟な対応 (2/2ページ)

柔軟に働き方で「稼げる仕事」となることが理想

 安易な労働時間規制の緩和は「ブラック企業」の台頭を許し、過労死を助長しかねないという懸念もあるのは確かである。だが、たとえばバスやタクシー業界では、業務を終え帰庫すると運転していた車両の洗車を運転士が行うのが一般的なのだが、これも含めて就業時間としている。なので、就業時間ギリギリに帰庫すれば洗車は残業となってしまい、これが積み重なれば当然ステアリングを握る実質的な時間も減ってしまうことになる。

 働きすぎというのはよくないことなのだが、単純な労働時間厳格化を行うと従来どおりにまわらない業種も出てくるのである。その一例が輸送業界なのである。

 労働時間の規制も大切だが、まずは「稼げる仕事」にすることが大切なように感じている。たとえばタクシーでは、運行する日が平日なのか休日なのか、そして天気によっても稼ぎが大きく変わってくるなど、「水もの」的な部分が、スマホアプリ配車が普及しても依然として目立っている。

 思ったより稼げなかった日は、帰庫するとどっと疲れが出てしまうこともあるようだが、予想以上に稼ぐことができると、本当に20時間運転してきたのか(隔日勤務)と思うほど元気なまま帰庫。そのうえ同僚に自慢する運転士もいて、その自慢に耐えかねた同僚とケンカすることもあるほどだという話を聞いたことがある。

 タクシーは地域差があるものの、スマホアプリというデジタルツールの導入もあり、「稼げる仕事」へと変化を遂げた。いまだ十分な人数は確保できていないものの、以前よりはだいぶ改善傾向にはあり、女性運転士も多く活躍しているようだ。

 路線バスにおいては、給与アップの早道は運賃の値上げとなるが、利用者の減少傾向も続くなか、労働時間規制だけが進んでいる。運賃値上げは利用者の反発を招きやすく、賃上げできたとしても思うようなレベルまでできないことが多い。残念ながら収入減への効果的な対策がないのが現状となっている。

 輸送業界だけではなく、働き方改革による労働時間の規制の影響で多方面にて「ひずみ」が発生しているのは間違いない事実。誰もが月曜日から金曜日に働き、土曜・日曜に休むということを繰り返しているわけではない。締め切りや納期といったものに合わせてカレンダーを意識せずにメリハリつけて働く業種もあれば、カレンダーに関係なくシフトに基づく仕事もあり、世のなかには変則的に働く仕事がたくさん存在する。

 今回の規制緩和も、ブラック企業的なものが目立たないように監視しながら、労働時間規制をもっと柔軟性のあるものにしていけばそれでいいものだと筆者は考えている。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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