自動車メーカーのお偉いさんたちも本質はただのクルマ好き!? 誰もが愛車に関して持ち時間の5倍を熱弁した自工会「未来モビリティ会議」で感じた日本の自動車業界の明るい未来【ジャパンモビリティショー2025】 (3/3ページ)

自動車メーカーのトップはやっぱりクルマが好き

 日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長は、現行モデルのフェアレディZを披露。しかしよく見ると、そのステアリング位置は左となっている。

「Zは私が初めて乗ったクルマであり、現行モデルも私の心を動かす存在です。ただ日本国内でも多くのオーダーが入っており、お客さまをお待たせしている状況で私が購入することに心苦しさがありました。そこでカリフォルニアに電話をかけ、グレーのZを購入しました。いまは通勤で毎日乗っています」

 ホンダの三部敏宏社長は、納車されたばかりだという最新モデルのプレリュードを紹介した。

「ちょっと前まで3モーターハイブリッドのレジェンドに乗っていたのですが、プレリュードが出たら買おうかなと思っていて。2週間ぐらい前に来たクルマです。だからまだ200kmぐらいしか乗っていません。 おかげさまで好評ですが、一番売れている年齢層は50代以上です。“究極のデートカー”といえばやはりプレリュードです。『当時は高くて買えなかった』という方々を中心に買っていただいています。今回も高いといわれてますが、50歳以上の人はみんなお金もあるので(笑)」

 ヤマハ発動機の設楽元文社長は、初代RZ250とXSR900という2台を紹介。

「現在はすでに手放してしまったのですが、RZ250を買った理由は斬新なデザインと軽量コンパクトということです。TZという市販レーサーをモチーフにして開発されたモデルで、相当にスポーティでした。XSR900は現在所有している車両で、こちらも軽量コンパクトさが魅力です。僕は2021年末までインドに駐在しておりバイクは所有していませんでしたが、日本に帰ってきて買おうとしたら、弊社の場合は『カスタマーファースト』、お客さまに納車するのが最優先ですと。1年ぐらい待って納車されたら、社長になってしまって乗る機会が少なくなりました。『バイクに乗る時間がない』ということが現在のフラストレーションで、早く自由に乗れるようになりたいと思っています(笑)」

 そして最後にスピーチしたのが、自工会 副会長・専務理事の松永 明氏である。

「1990年代の後半にミャンマーに駐在していた際、マツダB600というピックアップトラックが現地をたくさん走っていました。コンパクトなクルマなのですが、乗り合いタクシーとして驚くほどたくさんの人を乗せて街を走っていました。ミャンマーで仕事をしていると、日本に対する感謝や尊敬を感じましたが、それは日本製の自動車が持つ性能が高いという点が背景にありました。日本の自動車が日本という国を象徴していて、技術力が高いよね、いいよねと評価されていることを感じました」

「マツダB600は、トンボというあまり大きくはない街で生産されていました。現地に工場を造り、日本のエンジニアが何年も駐在して指導を行ったことで自動車生産ができるようになったそうです。自動車メーカーの先輩方の情熱が、自動車という製品を通して尊敬や信頼に繋がっていると感じています」

 ひととおり各自の愛車や自動車に対する想いが語られたあとは、フリーテーマによるトークセッションに。皆さんリラックスした雰囲気で話が進行するなか、プレリュードこそ究極のデートカーであるという話題から、日産自動車のシルビアに話題がシフト。日産自動車のエスピノーサ社長は、自身の母国であるメキシコでもS110型(3代目シルビア)が販売されていたこと、そして幼少期に隣に住んでいた人がS110を所有しており、小学校まで送ってくれたエピソードを披露。

「S15型シルビアは最高のシャシー性能をもっているクルマで、私は日産でベストなモデルのひとつと思っています。テストドライバーの訓練を行う車両としても使っており、S15型を高出力化した車両で訓練を行っています。プレリュードとシルビアが共存していた時代は、素晴らしいライバル関係だったのではないかと思います」

 その後もお互いの愛車のいいところを語り合うという、まさにクルマ好きならではのトークの応酬に会場は大盛り上がり。あっというまに終了予定時刻となってしまったが、この雰囲気こそが自工会の実態です、と片山会長は語った。

 片山氏は加えて、「先ほど事前打ち合わせをしたときに、自分の愛車に対する想いを1分で話してくれといわれました。そんなの絶対に無理だと思っていましたが、やはり実際にひとり5分ぐらい話しているんですよね。でも、これが自工会の実態なんです。みんなで喧々諤々と『どうやって自動車産業、日本のモビリティをよくしていこうか』と話し合っています。いつもこんな雰囲気です」とコメント。

 そのあとは、各参加者が「2035年にあったらいいなと思うクルマ」をボードに記して発表。いずれもクルマやバイク、モビリティ全般に対する「愛」を感じさせる回答となっており、100年に一度の大変革期と呼ばれる昨今だが、各メーカーのトップがこれほどの「モビリティ愛」をもっているのだから、その未来は必ず明るく楽しいものになる、そう確信させられたトークショーとなった。


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