クルマ同士がデータ連携してドライバーの心理を読んだAIが運転をサポート! 次期RAV4に搭載される「Arene」とトヨタが描く事故ゼロ時代のクルマ像の正体とは (2/2ページ)

トヨタの安全に対する新しい取り組みは「Arene」から始まる

■Arene──知能化を支える「土台」の正体

 次のプレゼンテーションでは新型RAV4に搭載される「Arene」という統合型ソフトウェアの機能について説明があった。

 Areneに関しては数年前から噂されていたが、具体的な仕組みや機能について、トヨタが始めてその価値を新型車に搭載し、知能化を支える土台となるAreneが明らかになった。これは単なる車載OS(基盤ソフトウェア)ではなく、トヨタ自身が「More than OS」と語っているが、「Arene」とはデータ収集、解析、開発環境、OTA(Over-the-Air)と呼び、車内だけでなく、クラウドまで含めたビッグデータをまわすソフトウェアのプラットフォームなのだ。従来はバラバラだったECUやソフトウェアを整理し、まずはADAS(運転支援技術)とIVI(車内のインフォテイメント)から統合を進めている。将来はさらに運動性能領域へも広げていくと説明があった。

 Areneは車載側だけでなく、クラウド側でも機能するように幅広い領域をカバーする。例えば、ADASでは走りながらAIがデータから学び、どんどん運転が上手になるのだ。ADASは自動運転ではなく、あくまでも高度な運転支援であるが、近い将来は市街地でもハンドルから手を離して運転(?)することが可能となる。ドライバーは目的地をカーナビで指定し、あとは前方を監視して走れるようになる。

 こうした機能はAIが人間のように成長し、E2E型(エンドトゥエンド)と言われる高度な運転支援に対しても、上流のモジュールが変わるだけで、土台であるARENEは健全に機能する。ポイントはデータが集まり、学習が進み、OTAで育ち続ける──その循環を確立するのがAreneであるわけだ。

 次世代の自動運転に資する「E2E」に関しては、E2Eの上流に「Vision-Language-Action(VLA)モデル」も必要とトヨタは考えており、AIがブラックボックス化しないように、目で見て理解し(Vision)、言語で意味を結び(Language)、行動を選び取る(Action)。このAIはロボティクスの分野からの技術転移だが、自動運転もロボットも同じ線上で進化するのかもしれない。クルマはもはや機械ではなく「自律的な存在」へと変わり始めている。

■ RAV4から始まる「安全と知能」の次章

 まとめると、インフラ協調、AIエージェント、Areneという三点は、いずれも「事故ゼロ」を実装するための布石である。来年登場する次期RAV4は、その未来の入口を担う最初の量産フェーズになるだろう。

 トヨタが描くシナリオは明快だ。ソフトが進化を生み、クルマは経験を学習する存在へと変わる。かつて走りの質を磨くことがクルマの進化であったように、これからは「知能の質」が競争軸になる。今回の取り組みは、その転換点を明確に示したワークショップであった。


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