公共交通機関がタッグを組んで利用者が増えた! 香川県坂出市の取り組みが成功したワケ

この記事をまとめると

■路線バスは路線を維持するための運行経費が大きい

■香川県坂出市の循環バスや路線バスでは地域公共交通活性化施策を実施した

■施策の効果もあり利用客が大幅に増える結果となった

この時代に路線バス利用客が大幅増となった背景

 路線バスは市民・住民の足として欠かせないインフラだが、必ずしも収益性が高い事業とはいえない。なぜならば、公共交通機関と位置付けられているから、乗客の少ない路線や時間帯でも、必要に応じて一定程度は運行しなければならないからだ。さらに、安全性・快適性・利便性などを確保する必要もある。要するに、運賃収入に対して運行経費が大きいのである。

 近年は少子高齢化が進み、地方では人口が減少しているところが少なくない。ただでさえ乗客が少ないところに人口が減れば、利用客が少なくなるのは自明の理である。こういった場合、事業者は運行本数を減らしたり運賃を値上げすることで、経営収支の改善を図ることが常套手段になっている。

 しかし、このやり方では利用者にとって、利便性や経済合理性が大きく低下することになる。結果的にますます利用者が減少し、さらに収益が悪化するといった悪循環に陥ることが多く、最悪の場合には路線廃止につながりかねない危険性を孕むことになってしまう。

 今回例に挙げる、香川県坂出市の循環バスや路線バスも同様で、両者は相乗効果どころか互いに足を引っ張りかねない状況に陥っていた。そこで、同市では以下のような地域公共交通活性化施策を実施したのである。

・ゾーン制運賃

 これまで、路線バスと循環バスでは料金体系が異なり、運賃が安い循環バスに利用者が集中していた。そこで運行区域をふたつのゾーンにわけ、ひとつのゾーン内であれば200円の均一料金とし、ゾーンを跨げば+100円というわかりやすい料金体系に変更した。

・市民割引制度

 1ゾーンの通常料金は200円であるが、坂出市民は半額の100円に設定。市民であるか否かは、マイナンバーカードによって判別する。

・路線再編とダイヤ見直し

 これまで3ルートあった循環バスの路線を2ルートに再編。病院や商業施設へのアクセスは維持しつつ、パターンダイヤを導入して運行便数を42%減らし、運行経費を25%削減した。これにより、市中心部における路線バスの利用者が増加した。

・利用対象者別支援策

 運転免許を自主返納した高齢者には、プリペイド型チケットを贈呈。また中高生を対象に、夏季限定の乗り放題パス(サマーパス)を販売して、通学外の利用を促進。QRコード決済「Ticket QR」利用者を対象に、定例日やイベント開催日に無料デーを実施。

・国の補助制度を活用

 運賃制度見直しによる利用増進効果と利便増進実施計画の認定により、国庫補助の特例措置が適用された。

 これらの施策が功を奏し、マイナンバーカードを利用した市民割引運賃では、公共交通機関全体の利用者が年間で約6000人増加。運賃体系の統一や運行ルートの再編をしたことでは、路線バスの年間利用者が1万3000人増えている。循環バス減便により、利用者は1万1000人減少しているものの、差し引きで2000人が純増となったわけだ。

 今後、地方において少子高齢化や高齢者の免許返納が進めば、公共交通機関はますます重要度を増してくる。公営・民営といった事業者の垣根を越えて、地域全体で運賃・路線を最適化すると同時に、住民のニーズにあったさまざまな利用促進策を工夫する必要があるようだ。


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