異文化に配慮し「礼拝スペース」も
身体を洗い、さっそく湯船に入ったのだが、これがなかなか熱い。表示された温度計は41度となっていたので、ジワジワと入っていく必要がある。なんとか肩までお湯につかると、先客の男性がドボンと一気に入湯。慣れているそのようすから常連のトラックドライバーではないかと推測できた。無言で湯船に浸かっているのも落ち着かないので、思い切って声をかけてみた。
「ここのお湯、熱いですね。」
この言葉をきっかけにいろいろと話を聞くことができた。男性は中・長距離のトラックドライバーで、頻繁にこの温泉を利用するとのこと。諏訪湖サービスエリアは飲食も充実しているし、仕事の合間に利用する機会が多かったが、ここの閉鎖を非常に残念に思っているひとりだった。
諏訪湖SAの外観画像はこちら
「この温泉がなくなっても隣のサービスエリアにシャワールームができるっていうけどさ、ちゃんとお湯に入れたほうがいいんだよな。オレは時間的に余裕がある勤務だから、なおさらシャワーだけじゃ物足りないし」と話してくれた。この男性、自分よりも先に上がっていったのだが、使った椅子と桶をちゃんと端に片づけるだけでなく、自分が使った場所もきれいにシャワーで洗い流して出ていった。その姿を見たときに「この温泉が大好きな人なんだ」と感じたのだ。
温泉を出たあと、マッサージ機の置いてある簡易的な休憩所でひと休みしたあとに、お風呂のなかから見える景色と似たようなアングルの場所で写真を撮ってみた。
浴場から見える景色と同様のアングルで撮影した写真画像はこちら
筆者が訪れたのが2025年9月なので、下り線の温泉はあと2カ月でこの景色も温泉からは見られなくなる。残念な思いでお風呂をあとにしたが、じつはもうひとつ諏訪湖サービスエリアで見たいものがあった。
それが礼拝スペースだ。NEXCO中日本の公式ホームページによると「ムスリムのお客さまをおもてなしするための礼拝スペースを開設します。」とあったので、サービスエリア内を歩きまわってみたが見つけることができなかった。
もう撤去されてしまったのかな? と思っていたところ、ドアの端に張り付けられた礼拝室の案内を発見した。どうやら礼拝室を使うにはスタッフに声をかける必要があるとのことなので、コンシェルジュにいってなかを見せてもらうことにした。そして、連れていかれた場所は温泉のある建物のさらに裏手だった。
礼拝室のなかは冷暖房もあり水道も使えるきれいな一室だった。 天井にはイスラム教徒が礼拝を行う際に直面するサウジアラビアのメッカにあるカアバ神殿の方向を指すキブラもちゃんと記されていた。
礼拝堂の屋根に記されたキブラ画像はこちら
礼拝堂を見たあとは、おなかも減ったので諏訪湖を見ながら食事をして締めくくった。観光客も多いサービスエリアだが、なかなかこれだけ視界の開けた景色を見られる場所もそうそうない。
諏訪湖を望みながら食事画像はこちら
温泉の閉鎖はさみしい限りだが、上り線の温泉は2026年1月末まではもう少し時間があるので、ぜひ機会があれば最後の温泉を楽しんでみてはいかがだろうか。