視界がよくて運転しやすいと人気の「SUV」! 逆に見えやすいがゆえに陥る「死角」と「錯覚」には要注意

この記事をまとめると

■人気のSUVは高めのヒップポイントが快適な視界を生み運転しやすさに直結する

■車高の高さは死角拡大の原因にもなるため補助装置の存在が重要だ

■速度や疲労で視野は大幅に狭まるため常に広く周囲を見る意識をもちたい

SUVが運転しやすいのにはワケがある

 世界的に高い人気を保ったまま、衰えを見せないSUV。デザイン性、使い勝手のよさ、走行性能の高さをちょうどよくバランスしているところが大きな魅力ですが、それに加えて運転席のアイポイントが高いことから、運転しやすいと感じる人が多いことも選ばれる理由のひとつといわれています。

 ではなぜ、SUVは運転しやすいと感じるのでしょうか。まず、アイポイントは乗る人の身長(座高)によって変わってくるため、地上からシート座面の高さで計測するヒップポイントで比べてみると、セダンでは地上から500〜550mm程度が多く、SUVでは600〜650mm程度が多くなっています。

 日本人男性の平均身長である約172cmでは、およそ600mm程度が乗り降りしやすく、快適な視界を得られるヒップポイントといわれていますので、やはりセダンタイプよりも人気のSUVタイプのほうが運転席の快適性が高いと感じやすいといえます。

 次に、運転席に座ったときにどのくらいの視界が得られるのかというと、停止しているときの有効視野角度は、水平がおよそ200度、垂直が上方におよそ60度、下方におよそ70度。ですが、ヒップポイントが低いと物理的に下方の視野角度は高さに応じて狭くなってしまいます。

 もちろん、ボンネットやフェンダー、サイドミラーなどの形状や取り付け位置によっても死角が生まれますが、高いところから見下ろすほうが、遠くまで見えていると感じやすいはず。そのため、SUVのほうが視界が広く、遠くまで見やすいという印象になっているのではないでしょうか。

 ただ実際には、車高が高いクルマは近くが見えにくく、とくに助手席側の斜め前方、フェンダー付近の死角が大きくなりがちなので、しっかりと安全確認をするためのサブミラーやカメラ等の補助装置の装着が義務付けられています。

 また、緊張しながら運転していたり、ナビを見ながらなど複雑なタスクをこなしながらの運転時は、有効視野が停止時よりも狭くなります。40km/hで走行している時に、水平では100度程度、垂直では約20度程度まで狭くなってしまうことも多いといわれています。さらに高速道路を100km/hで走行中の有効視野は、水平で約40度にまで狭まってしまいますので、意識してより広い範囲を「見よう」としなければさまざまな見落としが発生しがちです。疲労や眠気、焦りや怒りといった強い感情も、視野を狭める原因となりやすいので注意が必要です。

 そして、ヒップポイントが高いといえば大型トラックが思い浮かびますが、大型トラックの場合は約2mの高さから前方を見下ろすかたちで運転することになります。その場合に注意したいのは、どうしても前走者との距離が遠く感じやすく、実際の車間距離が短くなりがちだということ。そのためSUVでも、ヒップポイントが高いクルマの場合には同様の注意が必要となるでしょう。意識して車間距離に余裕をもって走行したいですね。

 ということで、車高が高いSUVは乗り降りがしやすく、運転しやすいと感じることが多いですが、やはり運転中はこうした注意点を意識しながら安全に運転してほしいと思います。


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まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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