この記事をまとめると
■ホンダNSXの登場によりそれを意識してフェラーリが開発したのがF355だどいわれている
■クーペ・デタッチャブルトップ・スパイダーのボディバリエーションがあった
■フェラーリとしては異例となる1万台超の販売台数を達成して大ヒットモデルとなった
これまでのフェラーリのイメージを打ち破った「F355」
日本車が海外メーカーに影響を与えたことは、相当な数に上りそうです。改善をはじめとして、目に見えない生産管理とかコストかけずに設計で利益出すとか……。あのフェラーリにしてもホンダNSXには驚いたようで、のちにリリースしたF355にはそこかしこに意識した跡が見え隠れしています。その甲斐あってか、デビュー以来30年以上が過ぎたいまでも「名車」とか「エポックメイク」などと熱い支持を得ているようです。
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とにかく、国内外でF355は売れまくりました。ご存じのとおり、工藤静香さんも新車購入からずっと乗り続けているほどの惚れ込みよう。皆さんのまわりにも「大切に乗られているF355」が生息しているのではないでしょうか。1994年のデビュー、当時の国内価格はベルリネッタが1490万円、デタッチャブルトップのGTSは1550万円、電動オープンとなったスパイダーで1625万円。為替の関係で先代の348よりも安い設定だったことも追い風となったに違いありません。
F355は車名の命名からして、それまでのやり方を変えてきました。すなわち、はじめにエンジン排気量、次いでシリンダー数という従来の方式に対し、排気量までは同じ(3.5リッター)でも、次の数字はバルブ数(各気筒5バルブ)という変化球。シリンダー数という単なるスペックでなく、5バルブによるパフォーマンスの向上を打ち出してきたわけです。このあたり、当時の社長、ルカ・ディ・モンテゼーモロのセンスや商魂が垣間見えるポイントかと。
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さまざまな刷新がなされてはいるものの、唯一フレームだけは348からキャリーオーバーしたスチールモノコックが使用されています。これはケチったわけではなく、V8をミッドに縦置きするパッケージとしての完成度が異様に高かったことが理由。剛性、重量、そして生産性のいずれも高い次元でバランスしていたとされています。
もっとも、F355の白眉はなんといってもF129のコードで呼ばれる3.5リッターV8エンジンにほかなりません。90度のバンク角、アルミ合金製ブロックなどは348と共通ながら、その他はほとんど新設計、新素材が投入され、前述の5バルブ(吸気:3/排気:2)と相まって、F1ユニットさながらの精密機械へと変貌しています。
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最高出力380馬力/8200rpm、最大トルク36.7kg-m/5800rpmは、348(320馬力/7000 rpm、31.6 kg-m/4000rpm)とは比べようとも思えません。注目すべきは最大パワー発生時の回転数で、これは5バルブの効率に加え、F1直系のピストン(マーレ)やチタンコンロッド(Ti6-Al-4V:独マシーネンファブリーク製と噂されています)といった高品位なパーツ群の効果大。さすがに、フルスロットルで高回転を維持したときの高周波サウンドは何物にも代えがたいもの。当時のF1が載せたV12並み、といったら言葉が過ぎるでしょうか。