えっ、クラシックカーでもないのに2.6億円のフェラーリが38億円で落札!? 600台目の限定車「SP3」にあり得ないプライスが付いたワケ (2/2ページ)

本来存在しなかったはずの600台目のSP3がオークションに出品

 そのデイトナSP3に、当初の計画にはなかった600台目のモデルが誕生したというニュースが流れたのは、今年の7月のことだった。「599+1」というシリアルナンバーをもつこのモデルは、8月のモントレー・カーウィークのなかで開催されるRMサザビーズのモントレー・オークションで、チャリティ・オークションにかけることを目的に製作されたもの。その全収益はフェラーリ財団による今後の教育事業に充てられるとされた。

 まさに、デイトナSP3を手に入れる最後のチャンスともいえるこのオークションには、当然のことながら世界から熱い視線が集まったが、その落札価格は2600万ドル(約38億2700万円)という想像を絶するものだった。

 そもそもICONAやスペチアーレなどの限定車を新車で購入できるカスタマーは、それまでの購入履歴はもちろんのこと、フェラーリとの絶対的な信頼関係をもつ者に限られており、オーダー時には転売を禁止するという条件にもサインを求められるともいう。したがって、これらのモデルが、デビューから長い時間を待たずに市場に出まわるということはあり得ないが、実際にはこれらの限定車が転売されるケースはあとを絶たないのが現実だ。

 聞くところによれば、この転売に応じるカスタマーが要求する対価は、購入価格の3倍程度というのが一般的な水準であるという。もちろんそれと引き換えに、これまで築いたフェラーリとの友好的な関係はそこで絶えてしまうことになるわけだが……。

 このような事情を考えても、やはり2600万ドルというデイトナSP3「599+1」の落札価格は異常な数字といえるが、それはこのオークションがチャリティを目的としたものであったことに直接の理由があるようだ。

 アメリカではIRS(アメリカ国内国歳入庁)によって認められた非営利団体への寄付に対して、個人では所得課税の60%を上限とした、いわゆる寄付金控除が適用される制度がある。フェラーリ財団への寄付はもちろんその対象で、したがってこのオークションへの入札者には、国に税金を納めるのならば自分の好きな機関に寄付をして、税制優遇によって支払う税金額を低くするという意識が働いていたことが容易に想像できる。

 それにしても、フェラーリとはいかに高いバリューをもつブランドなのだろうか。改めてその事実を知らされたオークション・リザルトだった。


この記事の画像ギャラリー

山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報