東京が世界の中心へと戻りつつある! ジャパンモビリティショー2025は世界で一番おもしろいショーになっていた (2/2ページ)

メーカーの個性が強く現れた展示内容に満足

 日産が発表した新型エルグランドも話題だった。皇室の御料車を思わせる深い朱色のボディカラーが印象的で、じつに日本的な佇まい。第3世代e-POWERは500Nmという圧倒的なトルクをもち、走りの感覚は極めて力強い。ただし、アルファード/ヴェルファイアのような設えの豪華さはまだわずかに届かない部分もあるかもしれない。

 トヨタのブースでは、アフリカ市場向けのIMVシリーズの展示が非常に印象的だった。スケートボード型のシャシーにハンドルだけつけ、あとはユーザーや現地の工房が自由に架装していく。まさに「ティア0.5」と呼べる新しい産業の種づくりで、こうしたボトムアップ型の発想は日本メーカーの強みだと感じた。

 今回のJMSでのキングオブコンセプトカーは、清水的にはカローラだ。2年前のレクサスブースで似たモデルが登場しているが、今回はその発展型。低いボンネットの中身を知りたくて、多くのメディアが問いただすが、トヨタは「マルチパス」としかいわない。

 創造力を発揮するなら、このモデルはリヤモーター・リヤ駆動。そのプラットフォームを活かせば、BEVも作れるし、仮に低いボンネットにおさまるエンジンを発電機を割り切るなら、シリーズハイブリッドのFRが作れる。その仮説が当たっていれば、スタックを搭載する水素燃料電池FCEVも可能だ。つまり、バッテリー・燃料電池・内燃機関と、トヨタがいうところの「マルチパス」が可能となる。これがキングオブコンセプトの理由だ。

 さらに、海外勢も本気度が高い。BYDは日本向けに右ハンドルの軽枠モデル「RACCO(ラッコ)」を世界初公開してきた。スライドドアのスーパーハイト軽EVで、日本市場のど真ん中を狙っている。デザインにルークスの要素を感じたのは、以前日産サクラを手掛けた人物がBYDへ移籍したという噂もあるからだろう。

 メルセデスやBMW、ヒョンデは燃料電池車(FCEV)の展示が目立ち、むしろトヨタ以上に積極的にFCEVをアピールしていた印象すらある。BMWがX5ベースの水素モデルを堂々と展示し、ヒョンデも新型NEXOをステージ中央に置いていた。EV一辺倒でない、多様なパワートレインの未来を真剣に模索している姿勢が伝わってきた。

 振り返ると、今回のショーは「東京が世界のモビリティショーの中心になりつつある」と感じさせる内容だった。すでにジュネーブショーは実質消滅、デトロイトは展示会レベルへ縮小し、CESとIAAミュンヘンが存在感を増すなか、東京はBtoCの来場者が増え、ASEANからのインバウンドも急増。未来のモビリティを広く一般へ伝える「ショー本来の役割」を、もっともバランスよく果たしていたと思う。

 私自身はガイドツアーを5回ほど担当し、屋外ステージのイベントも含めて連日歩きまわったが、とにかく飽きなかった。足の裏にはマメができたものの、それだけ歩いてもまだ見足りないと思えるほど、今年の東京は「世界で一番おもしろいモビリティショー」になっていた。


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