ジャガーXJ220をぶち抜いたのが「XF」 だと? 常軌を逸した360km/hオーバーの「ロケットスポーツXFR V8」という怪物セダン (2/2ページ)

最高速の聖地ソルトレイクの舞台へ

 ムーアはスペシャルXFが完成したあとには、アメリカのソルトレイクで開催されるスピードウィークで走らせることを決断。最高速にチャレンジするには絶好の機会ですが、アメリカにはジャガーでレースを闘っているロケットスポーツというファクトリーがあり、極限での走りに彼らのパートナーシップが欠かせないとの判断だったとか。

 ロケットスポーツの代表であり、レーサーも務めるポール・ジェンティロッツィはムーアに対して、ソルトレイクならではのカスタムとチューニングを伝授したとか。たとえば、ボディはできるだけスムースに整え、パーティングラインは神経質なほど「綺麗に埋めよ」とか、アンダーパネルの設置や製法、果ては減速用パラシュートのセッティングまで、微に入り細を穿つアドバイスでした。

 こうして、2008年11月のソルトレイクで「ロケットスポーツXFR V8」と名付けられたマシンは、ジェンティロッツィのドライブによって時速225.675マイル(363.2 km/h)を記録したのです。驚くべきことに、ミッションはノーマル車とまったく同じ6速ATで、エンジンともども一度たりとも不調をきたすことがなかったのだとか。

 また、ムーアは「じつはソルトレイクは標高1200mほどの場所にあるだけでなく、塩の路面もタイヤのグリップには不利なものでしたから、条件を変えればより速くなると確信しています」とも語っています。たしかに、過給器を使うエンジンにとって高地の薄い空気は不利にも思えます。

 また、タイヤについても適正な空気圧にするのに何度となくトライしたというコメントもありましたから、300km/hオーバーの世界はそれだけシビアなのでしょう。

 もっとも、ロケットスポーツXFR V8は再び最高速チャレンジに及ぶことはなく、ゲイドンにあるジャガー・ダイムラー・ヘリテージトラストに収められ、現在でも展示されています。

 ジャガー最速マシンを作り上げたムーアは「最高速もさることながら、このプロジェクトを通して何人もの親友が生まれたことが一番うれしい」と、クルマ好きの胸を熱くしてやまないコメントを残しています。


この記事の画像ギャラリー

石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報