数あるレースのなかでもなんでこの3つ? 「インディ500」「ル・マン24時間」「F1モナコGP」が世界三大レースと呼ばれるワケ (2/2ページ)

幾度とない名勝負が生まれた

 1923年に始まったスポーツカーによる耐久レースがフランス・ル・マンで開催されるル・マン24時間だ。毎年6月の第2週、もしくは第3週の土曜日/日曜日に開催されている。コースは、常設トラックとなるブガッティ・サーキットとその周辺の一般公道をつなぐ1周13km超のサルト・サーキットが使われる。主催はフランス西部自動車クラブ(ACO)が行っている。

 冠タイトルを車両の製造メーカーとし、このレースで勝った車両(メーカー)が世界でもっとも優れた技術力をもつという認識のもとで行われてきたレースだ。決勝グリッドは伝統的に55台分が用意されるが、この台数枠に最近変化があり、55台以上の車両で争われる年も珍しくなくなっている。

 メーカーの技術力が問われるレースだけに、時流に応じた車両規定が採用され、現在はハイブリッド車両も含むハイパーカー規定で行われている。長らくル・マンの名物として知られてきた6kmのストレート「ユーノディエール」は現在、安全上の見地から最高速度を制限する目的でふたつのシケインによって3分割されているが、かつては予選ラップで405km/h(WMプジョー)、決勝ラップで400km/h(ザウバー・メルセデス)という、とてつもないスピードを記録した超高速コースでもある。

 開催100年目となった2023年の大会には33万人の観客が集まり、ヨーロッパでのスポーツカー人気の高さとともに、ル・マン24時間に対するファンの熱い支持をうかがわせていた。

 2025年で93回の開催となったル・マンの最多勝利はポルシェの19勝、最多勝利ドライバーはトム・クリステンセンの9勝。日本車による勝利は1991年のマツダ787Bの初優勝、2018年から2022年までのトヨタTS050とGR010による5勝、日本人ドライバーの初優勝は1995年の関谷正徳選手(マクラーレンF1)となっている。

 そして、最後となるのがモナコGPだ。初の開催は1929年。現在はF1GPの1戦となっているがF1GPが発足したのは1950年で、モナコGP自体はそれ以前の時代に各地で行われていた、「グランプリ」レースの1戦として開かれていた。

 コースは、モンテカルロ市街地の公道コースで1周3.337km。主催はモナコ自動車クラブ(ACM)。アップダウンがありコース幅が極端に狭いことから追い越しがむずかしく、予選順位が決勝順位に大きく影響する特徴がある。

 モナコ公国は、バチカン市国に次いで2番目に小さな主権国家で、3万9000人の人口に対してモナコGP開催時には20万人の観客が訪れる人気の高さを見せている。

 モンテカルロ市街地という特殊なコースを使うため、ほかのF1GPが最低305kmの競技距離が必要と定められるていることに対し、モナコGPは260km強と短い設定となっているのも特徴だ。低速コースであるため、想定競技時間の2時間程度でレースを完了させるには260km(78周)前後が妥当、という判断で決められたものだ。

 ここで勝つことがドライバーとしてのステータスと位置付けられるF1GPのクラシックイベントでもある。最多優勝回数はアイルトン・セナの6回だ。

 さて、ここまで世界3大レースはインディ500、ル・マン24時間、モナコGPと紹介してきたが、この3大レースすべてを制したトリプルクラウンのドライバーがひとりだけいる。それが、グラハム・ヒルで、モナコGPは5回、インディ500は1966年(ローラ・フォード)、ル・マン24時間は1972年(マトラMS670)で、F1では2度の世界チャンピオン(1962年BRM-P57、1968年ロータス49B)にも輝くグレーデッドドライバーだ。

 歴史と伝統が培ってきたクラシック・イベント。世界3大レースをこうした言葉で置き換えることもできる。やはり、1度は見ておきたい、というより見てみたいレースだ。


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