この記事をまとめると
■MINIでは伝統的にその乗り味を「ゴーカートフィーリング」と表現している
■BMWの「シルキー6」もディーラーの若手セールスマンには伝わらなかった
■100年に一度の変革期でクルマだけでなく表現も変わりつつある
MINIといえば「ゴーカートフィーリング」
先日調べものをしていると「ゴーカートフィーリング」というものが目に入ってきた。これは、BMW MINI以前のクラシックMINIの時代からMINIの走行性能を語るときに用いられる表現である。
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クラシックMINIは、1959年にBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)において、Sirアレック・イシゴニス(アレクサンダー・アーノルド・コンスタンティン・イシゴニス/1969年にナイトの称号を授かっている)博士率いるチームの開発により世に送り出された。当時としては珍しい、エンジン横置き式のFF(前輪駆動)方式を採用。タイヤを四隅配置にすることで、限られたボディサイズなのに大人4名が乗車できる室内スペースを確保していた。
低重心設計で足まわりを固めにチューニングし、キビキビしたステアリング特性をもたせることでまさに「ゴーカートを操っているみたい」な運転感覚となっていたのである。全長3054mmはいまの軽自動車規格より約400mm短く、全幅1410mmはいまの軽自動車規格より70mm狭くなっていた。かなり以前のある日、取材のためクラシックMINIの撮影用車両を、当時在籍していた編集部の同僚が借りてきたのだが、軽自動車でも収まらないスペースに難なく収まったことに驚いたことを記憶している。
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その夜、急にクラシックMINIを預かることになったが、細かい操作方法がわからないまま(操作系がかなり個性的だった)運転すると、確かにいわれているようなゴーカートのような運転感覚とダイレクトなエンジン音に強く印象を受けたことも覚えている。
その後、MINIブランドはBMWグループ傘下となる。2001年に初代BMW MINIがデビューする。クラシックMINIに比べればかなりサイズアップしたものの、5ナンバーサイズは堅持されていた。ドイツ系グループ傘下となったイギリスブランド車に、BMWとクライスラーの合弁会社製エンジン(当時はクライスラーエンジンともいわれていた)が搭載されていたので、クラシックMINIのような運転感覚がなくなったのではないかとの声もあったが、実際運転してみると、不思議なぐらいかつての運転感覚が残されていた。そして2代目BNW MINIでは、かなり意識してゴーカートフィーリングを全体に渡り演出しているなと強く感じた。
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現行BMW MINIでは、BEV(バッテリー電気自動車)仕様でもゴーカートフィーリングが強調されている。標準車ではなくJCW(ジョン・クーパー・ワークス)のエレクトリックに試乗したのだが、細かいギミックでICE(内燃機関)車のような雰囲気を演出していたのは少々鼻についたものの、MINIの伝統は電動車となっても受け継がれていた。