ポルシェのハイブリッドはひと味違う! 速さを追求するための「e-Turbo」を積んだ911の超絶レスポンスが圧巻 (2/2ページ)

ポルシェは「走りの快感」を決して忘れない

 一方、2025年のマイナーチェンジで登場した新型911Turbo Sでは、さらに進化した「ツインe-Turbo」が採用されている。

 左右の気筒バンクにそれぞれ1基ずつ、合計2基のe-Turboを搭載。水平対向6気筒は左右独立の構造をもつため、それぞれのターボを電動化することで両バンクのレスポンスを完全に揃えるという狙いだ。左右のターボが同時に速く立ち上がるため、アクセルを踏んだ瞬間の応答は従来のターボ車とは別次元に鋭い。

 低回転から大トルクをもち、高回転域でも排気流量が減ってもモーターが補助するためパワーが落ちにくい。結果として0-100km/hは2.4秒台に短縮されている。これは約2倍の価格の新型フェラーリ・テスタロッサと同等の速さなのだ。

 さらに、超低速でもエンジンが1000回転もまわっていれば、想像を絶するトルクを発揮できる。3.6リッターツインe-Turboは、まるで大型ディーゼル車なみのトルクなのだ。これは街なかではとても使いやすい。重量増はシングルe-Turboが+50Kgに対して、ツインe-Turboは80Kg(推定)で済む。大きなバッテリーを使わない点もポルシェらしい。

 じつはポルシェとハイブリッドの関係はいまに始まったものではない。1900年のパリ博覧会でポルシェの創業者フェルディナント・ポルシェ博士は、エンジンで発電しインホイールモーターで走る「ローナーポルシェ」を発表しており、世界初のハイブリッドシステムといわれているが、ポルシェの名前が一夜にして欧州に知れ渡るほどの先進技術だった。残念ながら量産は叶わなかった。

 また、2010年のニュルブルクリンク24時間レースでは、911 GT3 Rに電気式フライホイール(KERS)を組み合わせたレーシングハイブリッドを実戦投入し、23時間目まで総合トップを走るなど、その技術力を見せつけた。筆者は同じレースにスバル・インプレッサ WRX STIで参加していたので、じつは記憶に新しい。

 こうした歴史が示すように、ポルシェにとってハイブリッドは単なる環境対応技術ではない。レースの現場で鍛えた技術を走りのために生かすというDNAの延長線上にある。いまの911 GTS T-Hybridや911 Turbo Sのe-Turboは、その集大成ともいえる存在だ。電動化が広がる時代にあっても、ポルシェは「走りの快感」というブランドの核心を失わないために、ハイブリッドを積極的に使いこなしているのである。


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