【試乗】タイプRよりホンダらしいじゃん! 昔のプレリュードを話でしか知らないホンダマニアの若手編集部員が新型に乗ってみた (2/2ページ)

こんな時代に出たことに感謝!

 車内はとにかくシンプルでスッキリ。余計なものが一切ない。シビック譲りの使いやすいレイアウトで、自然と手が伸びる。「なんだこの使いづらさは!」となることはないはずだ。なお、これに関しては周囲から「は?」といわれるのだが、今回のプレリュードに使われているシートは、なんとなく4代目プレリュードのシート形状に似ていると思っている。所有はしていないが、個人的には4代目プレリュードが好きなので、余計な脳内補正が入っているのかもしれないが……。とはいえ、ぜひ同じ意見をもつ仲間が欲しいので、ぜひ写真で見比べてほしい。

 ちなみにリヤシートは、子どもか相当小柄な人でないと普通に乗るのは無理。首がひん曲がる。最寄り駅までの送迎くらいなら使えるだろうか。ただ、荷物置きはもちろん、リヤシートを倒してフラットにすれば、巨大なラゲッジに早変わり。ゴルフバック2個が入ったカタログ画像からもわかるように、使い勝手抜群だ。2人であれば、どこへでも旅行に行けるはず。「デートなんかしらねー!」なんておひとり様でももちろんOK。なんならフルフラットになるので、思う存分車中泊もできるかもしれない。

 肝心の走りは、ギョーカイの諸先輩方たちに任せるといいながらも、せっかくなので少し語ってみよう。

 実際走らせてみると、これがまた今までにあったようでない、絶妙なフィーリング。エンジンやモーターのレスポンスは必要十分だし、キビキビ走ってくれる。とはいえ足は決して硬くなく、まさにドライブに最高なセッティング。これぞオン・ザ・レール。アクセルを踏めばスーって走って行く。まさにグライダーのようだ(乗ったことないが)。「これでいいんだよこれで」と、ついつい口から出てしまった。ブレーキはタイプRと同型の巨大な対向キャリパーなので、ストッピングパワーやコントロール性に不満なぞ出るわけない。

 とくに、今回のプレリュード最大のトピックである「S+シフト」のボタンを押すと、軽快に走ってる感じにさせてくれるサウンドやシフトショックを再現してくれて、これがまぁ楽しい。ついつい無駄に押したくなる。普段やかましいマフラーが入ったクルマに乗っているが、これであれば自分だけ走ってる感覚に酔えて、周囲には迷惑が掛からない。とても健全。音で目立つ時代はもうとっくに終わったと痛感させられる……。

 シビックタイプRの足まわりに、シビックe:HEVの中身がドッキングされて2ドアクーペ化されたというキメラのようなクルマだが、このパッケージングはとても考えられていると思う。「デートカー」を知らない人からしたら、得体の知れない格好いい2ドアクーペ、昔のプレリュードを知ってる人であれば、おそらく今どきのクルマにやかましいマフラーやガタガタな足まわり、狭い車内のクルマなんか求めていないだろうから、いい塩梅に思う。メーカー的には、使えるものは使って、作り直すものは作り直すという方式で、製造コストの調整もしやすい。じつに考えられたクルマだ。

 ただ正直、ガチガチなスポーツカーでもないし、かといってめちゃめちゃ燃費がいいわけでもない。そして価格は617万9800円と、シビックタイプRと同じ価格。「誰向けだよ!?」となるのはごもっともなのだが、こういった謎セールスがホンダ流だし、昔からホンダが好きな人であれば、「またやってるよ……(笑)」と思うことだろう。

 しかし今、筆者に「ホンダオタクの井上さん、ズバリホンダらしいクルマといえば?」といわれたら、きっとタイプRではなく「プレリュードっすね」と答えるだろう。とりあえず思いついたことを好き放題やる精神が、まだホンダには残っている。

 筆者はクルマ好きなので、デートカーといわれてもピンとくるにはくるが、世代ではないし、クルマ好きでない同世代であれば、「デート? クルマ? カーシェアでも使ってドライブすればデートじゃん(笑)」と答えるはず。なので、今回のプレリュードは変に「デートカー」といった表現を使わずに、「ホンダの考える新しいクルマ」と考えたら、きっとしっくりくると思う。

 後ろに人は乗れない、価格は安いとはいえない、ボディも大きい、ドアも2枚しかない……ネガな要素を挙げればなんでも出てくるが、利便性なんかそっちのけで、とにかく格好よければそれでいい。2ドアクーペというクルマはそもそもゼイタクでいいのである。これがわかる人が、今回のプレリュードのターゲットだ。腕時計だって今の時代必要ないが、ロレックスだのオメガだの、今でも需要はある。人生を豊かにしてくれる道具としてみれば、きっとこのプレリュードは最高の相棒になってくれるに違いない。

 今どきホンダがこんなクルマを出してくれたなら、業界もちょっとは盛り上がるかもしれない。他社からあとに続く似たようなクルマが出てくれば、きっとあと20年後くらいに、「令和に乗るべきお買い得中古デートカー⚪︎選」みたいな記事のレギュラー陣にこのクルマは入ってくるはずだ。なのでホンダ以外のメーカーにも、ぜひ頑張ってもらいたいカテゴリーだと思う。今の日本にはもっともっと2ドアクーペのように格好いいクルマが必要だ。

 以上、こんなにもゼイタクなクルマを、イマドキ新車で送り込んできたホンダに拍手を送りたい……と、若者の筆者が偉そうに語ってみた。あ、ぜひ北米に設定のあるレーシングブルーパール、日本にも入れてください。


この記事の画像ギャラリー

WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

愛車
ホンダ・シビックタイプR(EK9)/スズキ・ジムニー(JA11)
趣味
写真/ドライブ/サーキット走行/クルマ弄り/スノーボード/ダーツ/自転車/その他多数
好きな有名人
大泉 洋/織田裕二/篠原みなみ

新着情報